「致命的な欠陥」を騎手も指摘、スプリンターズSで問題視された「逆アイビス」疑惑
史上最多となる4頭の日本馬が出走した凱旋門賞(仏G1)で盛り上がった2日。国内では秋の短距離王決定戦であるスプリンターズS(G1)が開催された。
前哨戦のセントウルS(G2)で1分6秒2のレコード勝ちを演じたメイケイエールが、1番人気に支持されたが、勝負どころで手応えをなくして14着に大敗。上位人気馬が揃って掲示板にすら載れなかった一戦を制したのは、8番人気の伏兵ジャンダルム(牡7、栗東・池江泰寿厩舎)と荻野極騎手のコンビだ。
デビュー7年目の若手騎手と7歳を迎えたかつてのクラシック候補は、どちらもこれが初のG1制覇。母ビリーヴとの母仔G1制覇を達成したジャンダルムは、混迷極まるスプリント戦線の遅れて来たニューヒーローといえるだろう。
「ジャンダルムに感謝の気持ちで一杯ですし、関係者の皆様にも感謝したい」
感無量で初G1勝利を喜んだ荻野極騎手だったが、勝利の決め手となったのは、やはり若武者の好エスコートだ。出遅れることも多かったスタートの課題もこなし、道中も直線もスムーズに運べたことが大きかった。
中山の芝1200mは、3月のオーシャンS(G3)で後の高松宮記念馬ナランフレグを負かした舞台でもある。当時の勝ち時計が1分7秒9だったことを考えると、速過ぎない1分7秒8で決着したスプリンターズSは、好走条件が揃っていたのかもしれない。
「致命的な欠陥」を騎手も指摘
ジャンダルムの優勝が見事なことに変わりはないが、前日土曜に行われた勝浦特別(2勝クラス)の勝ち時計1分7秒7より遅かったことについては、レースレベルに疑問を投げ掛ける声が出たのも当然か。
前半3Fのラップこそ勝浦特別のそれより0秒7速い32秒7だったものの、スプリンターズSの後半3Fは逆に0秒8も遅かった。トップクラスのメンバーが集結したG1レースにしては、多くのファンが物足りなさを感じたのも分かる話だ。
そしてこれは、外を回した馬の多くが末脚の伸びを欠いた中山の馬場状態も、少なからず影響していたと考えられる。
なぜなら優勝した荻野極騎手が先行有利を意識していただけでなく、敗れた他の騎手も「内と外の差が少し出た感じ」「インが強く、枠や展開に左右された」「極端にインが有利」と指摘するコメントを残していたからだ。
「オールカマー(G2)でも外を回した馬が凡走し、内をロスなく走れた馬ばかり好走していたように、現在の中山は極端に内前有利のトラックバイアスが発生していると指摘する声はありました。
比較対象の勝浦特別も4コーナーで3番手以内につけていた馬が、上位3着までを独占しました。
スプリンターズSも、これを再現するような結果に終わったといえます。G1の舞台で能力以外の要素が、レースに大きな影響を及ぼしていたとすれば、致命的な欠陥といわれても仕方がありません」(競馬記者)
夏の新潟で行われるアイビスサマーダッシュ(G3)は、極端に外枠有利とされる舞台だが、今年のスプリンターズSは「逆アイビス」といえるほど内が有利な条件だったともいえる。
確かに良好な馬場状態の維持が、馬場造園課の尽力の賜物であることは間違いない。
とはいえ、想定の範囲内で枠順の内外に有利不利はあれども、複数の騎手からここまで馬場の影響を指摘するコメントが出されたのは問題だ。
トップクラスの馬が出走するG1は、各陣営が目標とする舞台。秋のG1はまだまだ始まったばかり。能力以外の問題が物議を醸すような事態は、できることなら避けたいものである。
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