改めて問われる「凱旋門賞信仰」の是非、安藤勝己や田原成貴も「別競技」で見解一致
2日、パリロンシャン競馬場で開催された凱旋門賞(仏G1)を制したのは、2番人気に推された芦毛の5歳牝馬アルピニスタ。昨春から無敗の快進撃を続けていた勢いそのままに、世界最高峰の一戦を制した。
今年で第101回を迎えた頂上決戦には、日本から過去最多の4頭が出走したものの、待っていたのは、受け入れがたい残酷な結末だった。
総大将的な存在のタイトルホルダーが11着、ステイフーリッシュ14着、ディープボンド18着、武豊騎手とコンビを組んだドウデュースも19着という有様。日本競馬の「悲願達成」は、またしても来年以降に持ち越されることとなった。
勝ちタイムの2:35.71から分かるように、この日のパリロンシャン競馬場は、直前の大雨で極悪馬場に悪化。軽快なスピードが武器の日本馬にとっては、非常にタフなコンディションだったといえる。
雨予報も出ていたため、馬場の悪化もある程度まで想定されていたとはいえ、レース後には「馬場が悪過ぎた」「雨さえ降らなければ」「運が悪かった」という声もチラホラ。昨年に続くアウェーの洗礼に手も足も出なかった現実を嘆くほかなかった。
だが、このような状況は、今に始まったことではないことも確かである。
改めて問われる「凱旋門賞信仰」の是非
重馬場で行われた過去の凱旋門賞でもエルコンドルパサーやナカヤマフェスタ、オルフェーヴルらが勝ち負けを演じているのだから、素直に敗戦を認めるしかない。
日本の競馬場が舞台なら、そんなことはないと弱音を吐いたところで、根本的な解決とはならない。底抜けのパワーとスタミナを求められるパリロンシャンに対応できるだけの適性と実力がなければ、今後も同じ過ちの繰り返しが目に見えている。
その一方で、『東京スポーツ』の田原成貴氏が「別の競馬」、元JRA騎手の安藤勝己氏が「異種目たるや、今年は超RIZIN級」と評した舞台設定に対し、ネットの掲示板やSNSなどで「凱旋門賞信仰」に疑問を呈する意見が出たのも当然の話だ。
「田原さんも仰っていましたが、まず馬場適性がないと通用しないでしょう。日本より遥かに時計も掛かる上に、重馬場の質も大きく異なります。ナカヤマフェスタは適性があったのでしょうけども、現実的に勝ち負けを期待されたのは、エルコンドルパサーやディープインパクト、オルフェーヴルのような歴史的名馬だったことも事実です。
やはり、馬場をこなせるという条件はありますが、逆境を能力で相殺できるくらいの実力がないと難しいように感じます。試行錯誤を重ねつつ、挑戦を諦めないホースマンの夢には敬意を払いますが、そろそろ“凱旋門賞信仰”についても見直す時期が来ているのかもしれません」(競馬記者)
コラム内で田原氏は「長期滞在して徹底的に適性を見極め、ダメなら日本に戻ってくる。それを繰り返すしかない。さもなければ、別に凱旋門賞を大目標にしなくても僕はいいと思う」と持論を展開していたが、これについては概ね賛同したい。
実際、日本を代表する国際レースのジャパンC(G1)でも凱旋門賞と似たような状況なのだ。2005年にアルカセットが優勝したのを最後に昨年まで16年もの間、日本馬しか勝利がなく、2019年には外国馬不在という存在意義を問われかねない危機的な事態にも発展した。
検疫等の問題があるにせよ、海外の一流馬が参戦しなくなった理由の一つに、高速化が著しい日本の軽過ぎる馬場が挙げられるのも合点がいく。その日本で好走している馬たちが、対極的な環境の凱旋門賞で結果を残せなかったこともまた然りだ。
いつのまにか「日本競馬の悲願」となってしまった凱旋門賞だが、個人的にはそこまでこだわる必要はないのではないか、という想いも少なからずある。
挑戦を繰り返してノウハウを得ることに意味はあると思うが、本気で勝ちにいくなら、やはり量より質。エルコンドルパサー、オルフェーヴル級の大物が登場するのを待ち、適性を見極めるためには、長期滞在も辞さずくらいの覚悟が必要なのかもしれない。
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