パンサラッサやサイレンススズカも及ばない、天皇賞・秋(G1)史上最速ラップの歴史
6万人を超える大観衆が見守る中、1番人気のイクイノックスの勝利で終わった天皇賞・秋(G1)。有力な3歳世代と実力ある古馬勢が相見えるとあって、戦前から大きな注目を集めていたが、3歳世代の大将格が世代交代の狼煙を挙げた格好だ。
クラシックで惜敗続きだったイクイノックスが待望のG1初勝利を掴んだことは勿論だが、この名勝負に一役買ったのは大逃げを打って2着に粘りこんだパンサラッサの存在が大きい。
近走ではスタート後のダッシュがつかず、先頭に立ってもタメ逃げのような形が続いていたパンサラッサ。事前に同馬を管理する矢作芳人調教師が「そういう(逃げる)競馬に徹したい」と堂々の逃げ宣言をしていたとはいえ、まさかここまでの大逃げに打って出ると予想できたファンは多くなかったはずだ。
道中では、2番手にいたバビットを10馬身以上も引き離す、まさに大逃げ。前半1000m通過タイム57秒4が電光掲示板に表示されると、東京競馬場は大いに沸き上がった。
また、この激流は近10年でも最速のペースであり、1998年の天皇賞・秋でサイレンススズカがマークした前半1000m通過タイムと全く同じだった。そういった背景もあって、レース後にはネットの掲示板やSNS等でも大きな話題を呼んだ。
天皇賞・秋史上最速ラップは…
歴史的なハイペースとなった今年の天皇賞・秋だが、過去にはパンサラッサとサイレンススズカを上回るラップで逃げた馬がいた。シルポートである。
競馬ファンの間では、知る人ぞ知る存在のシルポート。生涯でG1勝ちこそなかったものの、京都金杯(G3)やマイラーズC(G2)連覇など重賞3勝を挙げた逃げ馬だ。
2011年の天皇賞・秋で、同馬が記録した前半1000m通過タイムは56秒5。これは天皇賞・秋史上最速ラップである。今回のパンサラッサが刻んだハイラップより、さらに1秒近く速かったのだから、その逃げ足は驚愕に値する。
結果的にシルポートは16着と大敗したが、勝ったトーセンジョーダンがマークした勝ち時計の1分56秒1は、現在でも未だに破られていないコースレコードとなっている。
近年は馬場の高速化が進み、各競馬場でレコードが頻繁に更新されるようになった。だが、あれから10年経ってもこの記録が更新されていないのは、シルポートが演出したハイペースがあってこそだろう。
引退後は北海道新ひだか町のレックススタッドで種牡馬となり、現在も毎年産駒を輩出し続けているシルポート。父としてまだ重賞を勝っていないだけに、スポットを浴びることはないが、天皇賞・秋のハイペースで改めて思い出される1頭だ。
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