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武豊「1時間後」の神騎乗再現に絶賛の嵐! 大本命プログノーシス撃破で見せた6億円ホースの意地

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アドマイヤビルゴ

 まるでリプレーを見ているようだった。

 天皇賞・秋(G1)の発走が10分前に迫った阪神11RのカシオペアS(L)。日本中の競馬ファンが「競馬」にチャンネルを合わせる中、一足早く、その類まれな技術を披露したのがレジェンド武豊騎手だった。

 このレースは天皇賞・秋の前座を務める裏開催ながら、戦前から1頭の馬が異例の注目を集めていた。単勝1.5倍の大本命に推されたプログノーシスである。

 これまで5戦4勝。唯一敗れた毎日杯(G3)で先着を許したのが昨年のダービー馬で、この日の天皇賞・秋で2番人気だったシャフリヤールと、その日本ダービー(G1)で4着に好走したグレートマジシャンなのだから、“表開催”の天皇賞・秋を走っていても不思議ではない大器だ。

 武豊騎手が騎乗したアドマイヤビルゴ(牡5歳、栗東・友道康夫厩舎)は、それに続く2番人気に支持されていたが単勝オッズは9.0倍と、あくまで脇役の1頭に過ぎない存在だった。

 しかし、武豊騎手が魅せた“マジック”は、一番強い馬が必ずしも勝つわけではない競馬の奥深さを改めて知らしめるものだった。

「1時間後」の神騎乗再現に絶賛の嵐!

 15頭立てで行われた芝1800mのレースで、抜群のスタートを決めた武豊騎手とアドマイヤビルゴ。内にチラリと目をやって他馬から1馬身以上抜け出した状況を確認すると、スッと集団の先頭に立ってペースの主導権を握った。

 結果的には、この時点で勝負あったか。最後の直線では後方にいたプログノーシスが猛然と追い上げたものの3/4馬身差まで迫るのがやっとだった。

「見事なレースでしたね。実況の方もおっしゃられていましたが、9Rのリプレーを見ているようでした(笑)。

というのも、カシオペアSの約1時間前に行われた武田尾特別(2勝クラス)も同じ1800mのレースなのですが、やはり武豊騎手が逃げ切っています。それも頭数こそ違いますが、アドマイヤビルゴと同じ8枠から好スタートを決めてハナに立つという内容。単勝1倍台の大本命がいるレースの2番人気という点も同じでしたし、まさに“ユタカマジック”と言える騎乗でした」(競馬記者)

 この結果には、ネット上の競馬ファンもSNSや掲示板などで「ユタカマジック!」「まさかプログノーシスに勝っちゃうとは」「ユタカさん、やっぱ上手いな」「ほら、武豊を楽に逃がすとこうなるんだから……」など武豊騎手の鮮やかな逃げ切りを称賛する声が続々……。

 イクイノックスが勝った天皇賞・秋が大きな話題を集める中、武豊騎手が勝利に導いた「アドマイヤビルゴ」と「ドーブネ」がトレンド入りを果たすという異例の盛況ぶりだった。

 レース後、殊勲の武豊騎手が「久しぶりにこの馬らしい走りができて、すごく嬉しいです」と声を弾ませたように、アドマイヤビルゴはデビュー当初から大きな期待を背負った馬だった。

 競馬界では毎年7月に日本最大の競走馬セリ市・セレクトセールが行われ、世界が注目する良血馬が上場されている。そんな中で歴代2位となる6億2640万円(税込)で取引されたのが、アドマイヤビルゴだった。

 そんな“6億円ホース”がデビューを迎える直前、かつて「アドマイヤ軍団」を率いて一世を風靡したオーナーの近藤利一さんが他界。“遺言”として、アドマイヤビルゴを託されたのが共に数々の大レースを制した武豊騎手だった。

 そういった経緯もあって、デビュー前から大きな注目を集めたアドマイヤビルゴだったが、残念ながら現在もそのあまりに大きな期待に応えられてはいない。しかし、だからこそこの日の勝利は武豊騎手にとっても「すごく嬉しい」のだろう。

「これを機に軌道に乗せたい馬ですね」

 2着に敗れたプログノーシスにも言えることだが、武豊騎手とアドマイヤビルゴが目指しているところもカシオペアSの10分後に行われた天皇賞・秋のような大舞台だ。来年こそは“裏”ではなく、表舞台で姿を見たい2頭だった。

大村克之

大村克之

稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。

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