矢作厩舎が挑む中山・阪神・香港の“同日3場重賞制覇” カギ握る「特別戦0勝」の若き剛腕
この週末は土曜に中京競馬場で中日新聞杯(G3)、日曜は中山競馬場でカペラS(G3)、そして阪神競馬場では阪神JF(G1)という3つのビッグレースに加え、海の向こうで香港国際競走も開催。まさに競馬漬けの2日間となる。
矢作厩舎が挑む中山・阪神・香港の“同日3場重賞制覇”
香港のレースも15時10分発走の香港ヴァーズ(G1)からJRAネット投票で馬券が購入可能とあって、日曜日は実質“4場開催”の様相に。このうち中山・阪神・香港で行われる重賞レースに有力馬を送り込むのが、JRAの調教師リーディングで首位を快走している栗東・矢作芳人厩舎である。
今年はここまで全体トップの55勝を挙げているだけでなく、春先には海外の重賞を4つも制すなど、“世界の矢作”としてその名を轟かせた。地方・海外を含む総賞金は18億円超えと、名実ともに日本のトップに君臨している。
昨年もラヴズオンリーユーで香港C(G1)を制している矢作師だが、今年はパンサラッサで参戦。3月にドバイターフ(G1)を勝った快速逃げ馬を送り出し、2年連続のビッグタイトル獲得を狙う。
さらにこの日は国内でも、阪神で行われる2歳女王決定戦・阪神JFにラヴェルが出走。こちらは2戦2勝で出世レースのアルテミスS(G3)を勝利している素質馬で、日本と香港の同日G1勝利にも期待が高まっている。
同じ日に日本と海外で開催されるG1レースに管理馬を出走させるだけでも素晴らしいが、これで終わらないのが矢作厩舎。11日は中山で行われるダート短距離の重賞・カペラSにも有力馬がいる。それが6歳馬のジャスティンだ。
2年前のカペラSを勝利している同馬は、これまでに地方交流競走を含めて重賞3勝をマーク。ダートの短距離路線で活躍してきたが、その実績から近走では重い斤量を背負わされることも多く、昨年は5戦して勝利なし。苦しい戦いを強いられた。
それでも、今年は根岸S(G3)で12番人気ながら4着と奮闘を見せると、続く大和S(OP)では58.5キロを背負いながら逃げ切り、実に1年2カ月ぶりの勝利。休みを挟んだクラスターC(G3)でも58キロを背負って3着に粘り込み、復活をアピールしている。
前走の室町S(OP)は15着と1番人気を裏切る大敗を喫したものの、休み明けに加えてハンデが59キロと酌量の余地は大きい。それが今回は57キロで出られるとあって、2年ぶりの重賞制覇へ機運が高まっている。
そこで今回の注目ポイントとなるのが、鞍上に短期免許で来日中のT.マーカンド騎手を配してきたという点。ジャスティンとは初めてのコンビとなる。
マーカンド騎手は10月末に来日してからこれまでに12勝を積み上げ、大きな注目を集めている24歳。日に日に存在感を高めているが、その一方で気になるデータもある。これまで日本で95鞍に騎乗した中、「特別戦」での勝利がないのだ。
クラス別の勝利数を見ると、新馬戦が2勝で未勝利戦は4勝、1勝クラスが6勝とここまでで全12勝。2勝クラス以上の条件ではひとつも勝利がない。
詳しいデータを見ても、平場戦の成績が【12-5-6-43/66】で勝率18.2%、連対率25.8%なのに対し、特別戦では【0-4-5-20/29】で連対率13.8%とほぼ半減。上級条件での苦戦が目立っている。
重賞も【0-0-0-5/5】で馬券絡みもなし。とはいえ、騎乗馬の平均人気は10.0とチャンスは多くなかっただけに、ジャスティンと挑む今回のカペラSは真価が問われる一戦となりそうだ。
ダートの短距離に2歳牝馬、そして古馬の芝中距離と、まるで異なる条件の大舞台に有力馬を送り出すだけでなく、そこで稼ぐのが“世界の矢作”の真骨頂。“同日3場重賞制覇”に向けて、まずは第一の矢として登場するジャスティンとマーカンド騎手の新コンビに注目だ。
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