
トウカイテイオー「最後の産駒」キセキノテイオー能検合格! 遅過ぎる7歳デビューに賛否も…… 「奇跡の仔」は父の血を繋ぐことができるのか
28日、ホッカイドウ競馬の門別競馬場で行われた2度目の競走能力・発走調教検査を受検し合格した、キセキノテイオーが話題となっている。同馬を取り巻く問題は以下の通りだ。
キセキノテイオーは2014年7月3日に生まれた。つまり現在7歳での競走馬デビューとなる。2歳や3歳でデビューすることが通常の競馬界では異例の遅さである。同馬は、遊馬らんどグラスホッパーという乗馬施設で生まれ、乗用馬として過ごしていた。
しかし、昨秋行われたエンデュランス競技という長距離耐久レースで上位に入った事で、競走馬としてデビューを目指すことになった。競走馬デビューを目指す以前から種牡馬とする計画があったとされ、競走結果に関わらず種牡馬入りすることが決定している。
「7歳でのデビューは競走馬として遅すぎるため、そのまま乗馬としてゆっくりさせてあげればいいという声もネット上ではあるようです。さらに種牡馬となることが決まっているのなら、競走馬として厳しいトレーニングやレースに使う必要はないのではないかという心配もされていますし、既にクワイトファインというトウカイテイオーの仔が種牡馬入りしている為、賛否が分かれているようです」(競馬誌ライター)
同馬のデビューは、完全な歓迎ムードとは言えない。ではなぜ、この馬がこれほどの話題となっているのだろうか。
まず、トウカイテイオーの最後の産駒であることが考えられる。
トウカイテイオーは現役時、幾度も骨折し、復活を繰り返した奇跡の名馬である。たとえ現役時代を見ていなくとも、ラストランとなった有馬記念(G1)の勝利は、伝説として競馬ファンに語り継がれている。
キセキノテイオーは、そのトウカイテイオーの最後の産駒なのだ。母キセキノサイクロンにトウカイテイオーの種付けを行ったのは2013年7月10日。トウカイテイオーは8月30日に亡くなったため、この子が本当の意味で最後の産駒となってしまった。あのトウカイテイオーの血を引く子の走りを、最後に見られるかもしれないと思えば、競馬ファンなら気になるのは当然ではないだろうか。
「1度目の能検となった15日は1000メートルを1分10秒1で規定の1分9秒0に及びませんでしたが、28日には1分8秒6で合格を果たしました。キセキノテイオー自身の努力もさることながら、岡島玉一調教師と石川倭騎手、乗馬施設の代表を務める荒井亜紀氏ら関係者の努力も尋常ならざるものがあったでしょう」(同ライター)
母キセキノサイクロンにもドラマがある。
キセキノサイクロンは2002年3月28日に新冠町の畔柳作次さんの牧場で生まれた。しかし翌年の8月9日に台風による洪水が発生。畔柳さんが飼育していたサラブレッド4頭が流されてしまい、そのうち3頭は死んでしまった。その生き残りがキセキノサイクロン。名前の由来が台風から奇跡的に生き残ったからなのだ。
「奇跡を起こした馬」トウカイテイオーと「奇跡で生きた馬」キセキノサイクロン、その両方の血と名前を継いだ「奇跡の子」キセキノテイオーの走りに、浪漫を感じざるを得ない。
(文=蓬莱貴生)
<著者プロフィール>
小五でダビスタにハマり競馬と出会い二十余年。馬券よりも浪漫を求めがちだが、WIN5を買い始めから二戦二勝したことが些細な自慢。なお、現在の戦績は数えないようにしている。
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