
JRAマイルCS(G1)「ノーザンファーム」の運動会が濃厚!? 過去10年でも類を見ない異常事態に発展
21日に行われるマイルCS(G1)は、昨年に引き続き今年も阪神競馬場での開催。最強マイラーの座をかけて、各世代の実力馬が集結する注目一戦で忘れてはならないのが、ノーザンファームの生産馬だ。
昨年のマイルCSを振り返れば、17頭立てのうち同ファーム生産馬は7頭。結果的にも優勝したグランアレグリアから2着インディチャンプ、3着アドマイヤマーズまで「ワンツー」はおろか「スリー」まで独占した。
そして今年はさらなる“異常事態”が発生することに……。確定した出走馬16頭に対し、半数の8頭が同ファーム生産馬であり、しかも上位人気が予想される馬たちが揃っているのだ。
これで18年以降のマイルCSには毎年、ノーザンファームの生産馬が6頭以上も出走していることになる。ただでさえ多かった昨年の7頭を上回る8頭の出走は、過去10年で最多。しかもただ出走するだけでなく、毎年のように上位争いする有力馬を送り出している点から、最も得意とするレースだろう。
ここまで来るともはや今年のマイルCSは「ノーザンファーム大運動会」といっても過言ではない。
毎年のように多頭数出しを実現することにより、出走馬同士で賞金を“山分け”している感もあるが、その狙いはマイルCSだけではないようだ。
昨年11月17日に配信された『スポーツ報知』の記事によれば、同ファームの中島文彦ゼネラルマネージャーは「世界的にマイルの重要度は高くなっていますので、それに対応するための馬づくりを意識して取り組んでいます」と語っている。
言わずもがな、マイルとは1600mを指しており、この距離を基本に400m短い1200m、400m長い2000m、さらに400m長い2400mは、根幹距離と呼ばれている。中でも、1マイルは根幹距離の基本であるだけでなく、世界的にも重視されているといえるのではないか。
さらに馬づくりに対して「血統、配合、種牡馬など、世界的なトレンドを踏まえ、スピード面を意識している」と続けた中島氏。世界的に見てもリーディングサイアーになるには根幹距離に強いことが重要で、さらにスピード重視の近代競馬で通用するには、マイル戦に強い馬づくりを意識していることも伝わってくる。
事実、19年に行われたJRAの芝1600mのG1レースは、全てノーザンファームの生産馬が勝利しており、日本に7つある芝のマイルG1で完全制覇を成し遂げてしまった。
さらに18年ステルヴィオ、19年インディチャンプに続いて、昨年はグランアレグリアが制したマイルCSは今年で4連覇が懸かっている。これは偶然ではなく、中島氏の確固たる戦略を遂行している結果ともいえそうだ。
また主役を務めるグランアレグリアは、本レースをラストランにすると発表。しかし現役最強マイラーの名を誇る女王が引退しても、来年以降もまた同ファーム生産馬が“マイル王”に就く可能性は高いといえるだろう。さらに日本競馬界はもちろん、世界の競馬界にも、そう遠くない時代に「マイルといえばノーザンファーム生産馬」という競馬格言が生まれるかもしれない。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。
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