グランアレグリア「引退レース」で藤沢和雄師は28年前の再現へ! JRA・G1「通算33勝」した名伯楽の始まりは「雨中のマイルCS」

21日、阪神競馬場では第38回マイルCS(G1)が行われる。G1馬が6頭揃い、今年もハイレベルな一戦となりそうだ。
なかでも断然の主役はやはりグランアレグリア(牝5歳、美浦・藤沢和雄厩舎)だろう。デビュー当初から圧倒的なスピードを武器に短距離路線で活躍。これまで5つのG1タイトルを獲得してきた。
今年は大阪杯(G1)と天皇賞・秋(G1)で中距離チャンピオンの座、そして3階級(1200m、1600m、2000m)制覇を狙った。しかし、春は道悪に泣き、秋はエフフォーリアとコントレイルに力負け。ベスト舞台の阪神マイルでG1・6勝目を狙う。
そして、17日には陣営からこのレースでの引退が発表された。管理する藤沢和師も来年2月に定年引退を控えているため、師にとってもこれがG1制覇のラストチャンスになる可能性が高い。
1988年の開業以来、藤沢和厩舎が積み重ねた白星は「1550」、JRA・G1勝利数は「33」にも上る。そんな平成の名伯楽にとって、マイルCSは過去5勝している得意レースの一つ。G1では天皇賞・秋の6勝に次いで2番目に多い数字である。
最初の勝利は1993年のシンコウラブリイ。実は藤沢和厩舎にとって記念すべきG1初勝利でもあった。
アイルランドで生まれたシンコウラブリイにとって当時はまだまだ外国産馬が不遇の時代。出走できるレースには限りがあり、G1にはなかなか縁がなかった。
当時の3歳(現2歳)女王を決める阪神3歳牝馬S(G1)は3着、4歳(現3歳)時のマイルCSでは2着、5歳(4歳)春の安田記念で3着とG1では惜しいレースが続いた裏では重賞(G2、G3)を5勝。悲願のG1獲りに厩舎一丸で臨んだのがシンコウラブリイにとって2度目のマイルCSだった。
その日の京都はあいにくの雨。芝は不良まで悪化していたが、前哨戦のスワンS(G2)を重馬場で勝っていたシンコウラブリイは堂々の1番人気に支持された。
真っ黒の勝負服を纏った主戦騎手の岡部幸雄を背に好ダッシュを決めたシンコウラブリイ。ハナを主張したイイデザオウと2番手につけたマイスタージンガーを前に見ながらインに潜り込み、道中は好位3~4番手で折り合った。
3コーナーをすぎた辺りでうまく外に進路を切り替えたシンコウラブリイは、4コーナーを迎えたところで前を行く2頭に外から並びかけた。
直線を向いても抜群の手応えに満を持して岡部がゴーサインを送ると、残り1ハロン地点で先頭に躍り出た。逃げたイイデザオウもインで必死に食い下がるが、最後は1.1/4馬身差をつけてゴールに飛び込んだ。
「当時は競馬を覚えたてでしたが、このレースは鮮明に記憶しています。G1タイトルにはなかなか届かなかったシンコウラブリイを応援していたファンも多かったはず。私もそのうちの一人でした。
岡部さんの完璧な騎乗にも痺れましたが、レース後の勝利騎手インタビューも強く印象に残っています。確か『シンコウラブリイはこれで牧場に戻るので、生まれてくる子供たちを応援してやってください』のような発言だったと思います。競走馬は引退してもその役割を終えるわけではないんだとその時強く感じましたね」(競馬誌ライター)
藤沢和厩舎はその後、97-98年にタイキシャトルで連覇、01年にはゼンノエルシドで制覇している。そして昨年はグランアレグリアが19年ぶりに藤沢和厩舎に勝利をもたらし、連覇を懸けて引退レースに臨む。
繁殖牝馬としての第二の馬生を歩もうとしているグランアレグリアは、28年前のシンコウラブリイのように有終の美を飾れるだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
PICK UP
Ranking
5:30更新
「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
【香港C(G1)展望】BC制覇の偉業から1か月、ラヴズオンリーユー有終の美へ!レイパパレはC.スミヨンと新コンビ、最大のライバルは最高レーティングの英国馬
「シャフリヤールの激走はわかっていた」本物だけが知る有馬記念裏事情。そして“金杯”で再現される波乱の結末とは?- 「面白いこと教えてやるよ」横山典弘、打倒ソールオリエンスに手応えアリアリ!? 馬券に絡んだのはすべて内枠。「父兄参観」と揶揄された2年前とは一変
- 四位洋文騎手が「トラウマ」嘆く……武豊騎手も不快感を露にした昨年「マイルCS」ディサイファの悲劇
- 浜中俊「哀愁」の1年。かつての相棒ソウルラッシュ、ナムラクレアが乗り替わりで結果…2025年「希望の光」は世代屈指の快速馬か
- JRA調教師の目標は「餌やり」からの卒業!? 競馬界の「影の王」ノーザンファーム外厩大成功に存在意義ズタズタ……
- 武豊「スキャンダル」「ケガ」など揺れに揺れた2017年。弟・幸四郎騎手「引退」から小浦愛「不倫疑惑」、そしてキタサンブラック「大団円」までをプレイバック!
- 皐月賞(G1)クロワデュノール「1強」に待った!? 「強さが証明された」川田将雅も絶賛した3戦3勝馬
- JRA横山典弘「ポツン」について激白!「俺のポツンがあまり好まれていないことはわかってる」知られざる「2つ」のポツンと、それでも続ける理由とは
関連記事

JRAマイルCS(G1)距離短縮グランアレグリアに「意外」な落とし穴!? 連覇狙う女王に昨年と違い過ぎる割引条件テンコ盛り?

JRAシュネルマイスターに「黄信号」点灯か!? マイルCS(G1)で越えなければならない幾多の壁とは

JRAマイルCS(G1)苦しい「本音と建前」が見え隠れ!? 秋G1「裏切り続き」の厩舎がシュネルマイスターと汚名返上へ

JRAマイルCS(G1)「代打の神様」池添謙一の一発に要注意!? 現役屈指の乗り替わり職人がグレナディアガーズと虎視眈々

JRA【マイルCS(G1)展望】グランアレグリア「蹄に痛み」は杞憂に終わる!? 充実一途シュネルマイスターに逆転の目は…グレナディアガーズ、インディチャンプも虎視眈々
















