「岩田康誠×クリノガウディー」人馬とも“色々”あったコンビの紆余曲折、息子の望来は初重賞勝ちの期待
今週21日、阪神競馬場で行われるマイルCS(G1)でクリノガウディー(牡5歳、栗東・藤沢則雄厩舎)が岩田望来騎手とのコンビで参戦を予定している。
クリノガウディーといえば、昨年史上初の無観客G1になった高松宮記念(G1)で1位入線するも、直線で内側に斜行したことにより4着に降着。G1レースでは、2010年ジャパンC(G1)のブエナビスタ以来となる1位入線した馬の降着処分となった。
また、クリノガウディーに騎乗した和田竜二騎手は9日間の騎乗停止処分に。管理する藤沢則雄調教師にとって、初のG1勝利かと思われたが、なんともほろ苦いレースになってしまった。
結果的に降着してしまったが、このレースでグランアレグリア、モズスーパーフレアなどのG1馬に先着したことから、次走以降のクリノガウディーの走りに多くの注目が集まった。しかし、ここからなにか歯車が狂ってしまったかのように調子を落としてしまう。
CBC賞(G3)を皮切りに重賞に7回挑戦したが、5着は2回あったものの、馬券圏内は一度もなく、2桁着順が3回。その後、オープンレースにも出走したが、結果は15着と、そこにかつて高松宮記念で強敵に競り勝った「幻のG1馬」の面影はなかった。
だが、そんなクリノガウディーの立て直しに一役をかったのが、岩田康誠騎手である。同馬とのコンビが決まってから、厩舎から「うちの調教パターンとは全然違うんだけど」と言われたほど付きっ切りで調教を行い、初コンビで参戦した鞍馬Sでは1着に。2年7カ月ぶりの勝利という最高の結果で応えた。
2012年、ダービーの時にもディープブリランテを管理する矢作芳人調教師に電話をし、毎日の稽古での騎乗を志願した岩田康騎手。調教方法をめぐって、厩舎スタッフと意見がぶつかり、軋轢もあったというがダービーではしっかりと結果を出し、自身も初のダービージョッキーとなり、矢作調教師の初のダービー制覇に大きく貢献をした。
競馬というのは勝負の世界。結果を出さなくては取り残されていく厳しい中で、やはり岩田康騎手のように自分の意見を臆さずしっかりと伝えるなど、我を強く持つことはとても大切だ。
しかしそれが裏目に出てしまう出来事がクリノガウディーにとって久しぶりの勝利の2週間前に起こった。
岩田康騎手が返し馬で藤懸貴志騎手の騎乗馬に対し、馬ごとラチに幅寄せし、粗暴な発言に及んだ。目撃した複数の騎手からの通報を受け、岩田康騎手は14日間の騎乗停止処分に。前代未聞のその行動に各方面から「処分が甘い」との声が多く飛び交った。
そして、くしくもクリノガウディーにとって2年7カ月ぶりの勝利が岩田康騎手にとって、騎乗停止明けの復帰後初勝利となった。
そんな縁の深い岩田康騎手とクリノガウディーだが、21日に行われるマイルCSではケイデンスコール(牡5歳、栗東、安田隆行厩舎)に騎乗するため、息子である岩田望騎手にバトンタッチ。
人馬ともにいろいろとあった岩田康騎手とクリノガウディー、そしてクリノガウディーに関わる人たちに、まだ重賞を勝てていない岩田望騎手が重賞連敗にピリオドを打ち、「人間万事塞翁が馬」と思ってもらえるような最高の結果をもたらす姿を期待したい。
(文=長尾りょう)
<著者プロフィール>
はじめての競馬、ジャパンCで5番人気シュヴァルグランの単勝を当て、競馬にハマる。オルフェーヴルのように強いが、気性が荒く、成績にムラのある馬が大好き。今までで1番忘れられない馬券は、2018年の有馬記念ブラストワンピースの単勝。
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