元JRA安藤勝己氏「距離延長問題ない」も……サリオス陣営が真逆の決断、高松宮記念(G1)大逆転の「ヒント」はキングヘイロー?
先週末の中央競馬は、土曜阪神でチューリップ賞(G2)、日曜中山で弥生賞ディープインパクト記念(G2)がそれぞれ開催。いずれも本番となる桜花賞(G1)、皐月賞(G1)と同舞台のトライアルレースとあって大きな注目を集めた。
昨年の阪神JF(G1)を1番人気で4着に敗れたナミュールは、ポテンシャルの高さを証明して勝利。朝日杯FS(G1)を3番人気で制したドウデュースは、1番人気で2着と敗れたが、“展開のアヤ” が影響したことを思えば、休み明けのトライアルとしては悪くない結果といえるだろう。
春のクラシックの足音が徐々に大きさを増した東西の重賞だったが、その前に2週後の開催を控えている春のスプリントG1である高松宮記念にも触れておきたい。
昨年の覇者ダノンスマッシュが引退し、ブレイク中の新鋭・横山武史騎手を新たに鞍上に迎える昨年の2着馬レシステンシアが中心視されそうだ。
しかし、もう1頭気になるのがデビュー以来、最短距離となる芝1200mにあえて参戦してきたサリオス(牡5、美浦・堀宣行厩舎)の存在である。
■コントレイル世代NO.2との呼び声もあったサリオス
3連勝で2019年の朝日杯FSを優勝し、翌年の春二冠で無敗の三冠馬コントレイルに次ぐ2着。秋の毎日王冠(G2)でも古馬相手に楽勝したものの、次走のマイルCS(G1)では出遅れも響き、初めて連対を外す5着。以降も翌春の大阪杯(G1)、安田記念(G1)、マイルCS、香港マイル(G1)で結果を残せずに伸び悩んでいる。
コントレイル世代NO.2の実力馬に対し、ファンや関係者も大きな期待を寄せていたが、中でも最も贔屓にしていたのは、3歳時から「オレが好きなタイプ」「距離は全然持つ」「引退する頃には(コントレイルに)勝るとも劣らない実績を築いとるはず」と評していた元JRA騎手の安藤勝己氏だろう。
自身の公式Twitterにて、安藤氏は「何度も言うけど、サリオスは基本マイルじゃ忙しい」と距離短縮に否定的なスタンスを表明。半姉のサラキアが有馬記念(G1)で2着に食い込んだことからも、父がハーツクライの弟なら中距離以上に適性があると主張してきた。
ところが、そんな安藤氏の想いも空しく、陣営が選択したのは中距離の大阪杯ではなく電撃の6ハロン。8日現在でこれに触れるツイートは見られないが、まさかのスプリント参戦に複雑な気持ちではないだろうか。
■迷走した実力馬復活のヒントとは
ただ、この意外にも感じられる選択は、もしかしたら悩めるサリオス陣営にとって好結果をもたらす可能性もある。
競走馬の距離適性は、両親の血統的な背景や持って生まれた気性により左右されるケースも珍しくない。
血統的には距離をこなせる背景もあったサクラバクシンオーが、素質を開花させたのはスプリント戦線に切り替えてからだ。
他にも当時の東京スポーツ杯3歳S(G3・現G2)を制し、ラジオたんぱ杯3歳S(G3・ホープフルSの前身)で好走したキングヘイローやアドマイヤマックスが、クラシック候補といわれながら、念願のG1初制覇を手にしたのは古馬となった高松宮記念だった。
2頭の共通点は芝の重賞勝ちが1800mまでということを考えると、奇しくもこれはサリオスにも重なる。安藤氏の思いとは裏腹に、2度目のG1制覇は高松宮記念なのかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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