JRAデアリングタクト世代「52戦0勝」の衝撃…日本最高・種付料1800万円エピファネイア「バブル」崩壊で、エフフォーリア復活にも暗雲
中央競馬は春のG1シーズンの真っただ中。今週末は牝馬クラシックの第1戦・桜花賞(G1)が行われるなど、今後も毎週のようにビッグレースが開催される。
一方で馬産地ではいよいよ種付けの時期を迎える。現代競馬において血統が重要なのは言うまでもなく、どの繁殖牝馬にどの種馬をつけるかは馬産ビジネスの根幹ともとれる。牧場関係者は今頃、未来のスターホース誕生に向けて、競走馬の配合に様々な思いを巡らせているはずだ。
2022年の各種牡馬の種付料を見ると、エピファネイアが1800万円で種付料1位となっている。2位のロードカナロアが1500万円、3位のキズナ、コントレイルが1200万円であるから、エピファネイアはダントツトップの額である。昨年の1000万円から倍額に近い金額アップがあったのにもかかわらず、年末の時点で種付けは既に満口。馬産地での種牡馬・エピファネイアの評価の高さが伺える。
2016年の供用開始以来、毎年200頭以上の肌馬を集め、初年度産駒から3世代続けてG1ホースを輩出しているエピファネイア。種牡馬界を牽引する者として「ポスト・ディープインパクト」の最有力候補とみられていたが、ここにきてその種牡馬価値を揺るがす「3つの疑念」が浮上している。
まず、エピファネイア産駒には全体的に「早熟」の傾向がみられる。
初年度産駒が5歳を迎えた今日までに、古馬になってからJRAのG1で連対した例は1つも無い。馬券内に食い込んだ例も21年・エリザベス女王杯(G1)でのクラヴェルの3着のみ。古馬になってからの重賞勝利も21年・アリストテレスのAJCC(G2)1例のみである。そのアリストテレスも4歳・1月という若い時期での勝利以降、重賞戦線で苦戦を強いられている。
重賞に限らず産駒の全成績をみても、勝率・複勝率は年を重ねるごとに低下している。2歳時の複勝率は31.1%と好成績なのに対して、5歳時の複勝率はわずか9.6%に留まっている。加えて、現5歳世代は今年に入り、のべ52レースに出走しているが、勝利数はゼロである。このようにデータ面でもハッキリと「早熟」の傾向が表れている。
2つ目の懸念は、産駒に「虚弱」体質が目立つ点だ。
初年度産駒にして無敗の牝馬3冠を成し遂げたデアリングタクトは4歳春に繋靱帯炎という、引退してもおかしくないレベルの大怪我を負った。幸いにも回復は順調で、春のG1へ出走を予定しているようだが、全盛期のパフォーマンスが戻る保証は無い。また、昨年の菊花賞(G1)で2着のオーソクレースは、1月のAJCC後に屈腱炎を発症。回復が難しいとのことで、残念ながら先日引退が発表された。
この体質の弱さは、エピファネイアの母・シーザリオに由来すると思われる。シーザリオは日米のオークス(ともにG1)を制した名牝であるが、アメリカ遠征後に発生した故障が原因で引退。また、シーザリオはエピファネイアに加えてリオンディーズ、サートゥルナーリアと3頭のG1馬を輩出しているが、この3頭はいずれも母同様に怪我での引退を余儀なくされている。
3つ目の懸念は、産駒の成績が「不安定」な点だ。
エピファネイア産駒は他の上位種牡馬に比べると、勝ち上がり率(=産駒が1勝を挙げる割合)が低い。過去に種牡馬を牽引したキングカメハメハは48.0%、ディープインパクトは63.0%であるのに対して、エピファネイアの産駒は35.5%に留まっている。
現役種牡馬でみても、キズナ産駒の42.9%、ロードカナロア産駒の41.3%に比べて、エピファネイア産駒の数字は物足りない。産駒の能力の振れ幅が大きい「爆発型」の種牡馬であり、1800万円の種付料を回収できる産駒は今後も一部に限られるだろう。
エピファネイアの種付料は供用開始から数年は250万円であったが、デアリングタクト、エフフォーリアの活躍で「バブル的に」急激に種付料が高騰している側面がある。
一方で今月に入り、大阪杯(G1)でのエフフォーリアの惨敗、オーソクレースの怪我での引退など、エピファネイアにとっては逆風となる話題が続いている。今後はレイデオロ、コントレイルといった新種牡馬の台頭も予想され「ポスト・ディープインパクト」の争いはさらに過熱するだろう。
「早熟」「虚弱」「不安定」3つの疑念を振り払い、1800万円の種付料に見合う価値を証明できるのか。エピファネイア産駒の今後の動向に注目していきたい。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。
PICK UP
Ranking
23:30更新- 【天皇賞・春(G1)】ドゥレッツァも、タスティエーラも不安材料たっぷり? キャプテン渡辺「渾身の本命馬」は【徒然なる神のくず競馬トーク】
- 【NHKマイルC】アスコリピチェーノ主戦を背に追い切りも「鞍上未定」の怪…レース当週C.ルメール復帰予定、何かしらのサプライズも?
- 【天皇賞・春(G1)予想】「盾男」武豊騎手&サリエラから三連複1点勝負!
- 「オーナーの逆鱗」に触れた原優介が突然のクビ宣告!? 帝王賞でウィルソンテソーロ降板も決定済み…気になる「鞍上交代」はやっぱりアノ人?
- 【天皇賞・春(G1)】リピーターはディープボンドではなく「長丁場で大崩れがない」アノ1頭? 単穴は「豊富なスタミナが武器」の堅実派…まさに伏兵といえるベテランも? 超強力“現場ネタ”から紐荒れで狙える伏兵が浮上!?
- 【天皇賞・春】武豊に次ぐ「長丁場の鬼」が超人気薄で虎視眈々…!?「バテない馬だし京都向き」惨敗で評価急落も条件大好転
- 目を掛けた愛弟子の「造反」に師匠がブチ切れ!? 今村聖奈、角田大河の謹慎中に存在感発揮も…安田記念前に師弟関係で遺恨勃発か
- 【天皇賞・春】堅そうだから本命は上位人気で勝負!C.ルメール不在なら「初G1勝利コンビ」に期待したくなるよね【UMAJOモモのオイシイ競馬】
- 【天皇賞・春】武豊、横山典弘を敵に回して豪脚一閃!マヤノトップガン&田原成貴の試行錯誤が三強対決に断【競馬クロニクル 第53回】
- 【NHKマイルC(G1)展望】ジャンタルマンタルVSアスコリピチェーノ「2歳マイルG1馬対決」実現! 重賞ウイナー総勢9頭「超豪華メンバー」が集結
関連記事
JRA大阪杯(G1)凡走エフフォーリアに「2つの呪い」が直撃!? 最強馬を襲った父と逆神のダブルパンチ……、デアリングタクトの復帰にも逆風
JRA大阪杯(G1)エフフォーリアを襲う2つの「最悪データ」…父エピファネイアも屈した「血の宿命」に抗うことはできるのか!?
JRA大阪杯。年度代表馬エフフォーリアを襲う父エピファネイアの呪い…。最強伝説に立ちふさがる壁とは?
JRA 種付料No.1エピファネイアに「新たな疑惑」が浮上!? エフフォーリア・デアリングタクト輩出も今年が「試金石の一年」となるワケ
JRA 「超良血」エピファネイアの弟がまさかの惨敗!? 兄譲りの「潜在能力」秘めるも生かせない陣営に寄せられる疑問の声とは