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日本競馬を沸かせた「華麗なる一族」とは何者なのか

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撮影:Ruriko.I

 7日は新潟・札幌でそれぞれダートの重賞が開催される。新潟では3歳限定のレパードS(G3)、札幌は北海道シリーズ唯一のダート重賞となるエルムS(G3)の開催を予定している。

 エルムSの出走予定馬にはダートで8連勝中の怪物候補ブラッティーキッドをはじめ、重賞3勝のスワーヴアラミスやオメガレインボーといった実績馬が名を連ねているが、その中にあって注目したいのが、アイオライト(牡5、美浦・武藤善則厩舎)だ。

 函館ダート1700mで行われた前走の大沼S(L)を勝利したことで人気になりそうだが、正直なところ見るべき実績は全日本2歳優駿(G1)で2着がある程度。近走も重賞とオープン戦で二ケタ着順を連発しているなど、まだまだ半信半疑な部分は残っている。

 その一方、ひときわ目立つのはアイオライトに引き継がれている名馬の系譜だ。

 父ローレルゲレイロはスプリンターズS(G1)、高松宮記念(G1)を制したスプリンター。その父は世界的良血馬だったキングヘイローで、高松宮記念の二代制覇を成し遂げている。にもかかわらず、産駒はどちらかと言うとダート寄りに出ており、アイオライトはその代表産駒の1頭となっている。

「華麗なる一族」とは何者なのか

 父系が世界的良血に連なる血統だが、今回注目したいのは母系の方。母ステラアクトレスは中央で勝てず金沢へ転出してダートで2勝を挙げた程度の馬だが、この3代母がイットーという牝馬なのだ。この名前にピンと来る方は相当なオールドファンか良血好きとお見受けするが、かつて日本競馬で「華麗なる一族」と呼ばれた良血の始祖となる牝馬である。

 イットー自身もスワンSと高松宮杯(高松宮記念の前身)の重賞2勝を挙げているが、このイットーの初仔となったのがハギノトップレディである。グレード制施行前の80年、オークスこそ大敗しているが、桜花賞とエリザベス女王杯(当時の牝馬3冠の3冠目)の2冠を制し、古馬になっても高松宮杯を勝利した名牝である。ちなみに函館の芝1000mでデビューしているが、この時に樹立した57.2秒は函館1000mの2歳レコードとして未だに破られていない。また、キャリア3戦で桜花賞を制しているが、これは32年ぶり2頭目の快挙で、これに続く馬は無敗の3冠牝馬となったデアリングタクトまで出てこなかった。

 1歳年下の桜花賞馬ブロケードと函館の1800m戦で新旧桜花賞馬がマッチレースを演じた巴賞(OP)は、今でも語り草になっているトウショウボーイとテンポイントの有馬記念のマッチレースと並び称される名レースとなった。

 母としても「天馬」トウショウボーイと配合され、安田記念(G1)とスプリンターズS(G1)を制した名牝ダイイチルビーをターフに送り出した。当時、若き天才と持て囃された武豊騎手がデビュー戦から騎乗し、オークス(G1)とローズS(G2)5着の成績を残し、その後は主戦を河内洋騎手(現調教師)にチェンジして、上記のG1を制している。

「華麗なる一族」はこのハギノトップレディの活躍に始まっているが、2歳下に名馬・ハギノカムイオーが生まれ、華麗なる一族の名を世に広める。ハギノカムイオーは今で言うところのセレクトセールのような競走馬のセリ市で79年当時の最高落札額となる1億8500万円で落札されたことで注目を集めた。現在の貨幣価値に換算するとザッと3億7000万円くらいの落札額というとピンと来るだろうか。

 4歳(現在の3歳)デビューと遅かったが3連勝でスプリングSを制し、高額落札馬に違わぬ活躍を期待されたが、皐月賞で16着、当時のダービートライアルNHK杯(NHKマイルCの前身)で12着と大敗し、関係者を落胆させる。秋は神戸新聞杯、京都新聞杯(当時は菊花賞トライアル)を連勝して菊花賞に期待がかかるが、本番は15着とまたも大敗。が、古馬になってスワンS、宝塚記念、高松宮杯と重賞を3連勝して良血の底力を見せつけた。その後、第3回のジャパンCや有馬記念に出走したが、結果を残せず引退。種牡馬としても残念ながら重賞を勝つような産駒を残せなかった。

 父系として血を残すことはできなかったが、ダイイチルビーからオークス3着のダイイチシガーが出たほか、ハギノトップレディの孫にあたるマイネルセレクトがJBCスプリント(G1)のほかダート重賞4勝を収めるなど細々ではあるが血脈が残っている。

 ローズにちなんだ馬名で有名な「バラ一族」やエアグルーヴに連なるダイナカールの一族、ダイワメジャー、ダイワスカーレットに連なる一族など、現代の日本競馬には結果を残してきた良血馬の一族がいる。

 日本競馬の一端を支えているといっても過言ではないほどだが、今から40年ほど前の日本競馬にもまた良血一族がいた。そして、その血脈に連なる馬が重賞の表舞台に出てくる。これもまた競馬の楽しみ、「血のロマン」ではないだろうか。

(文=ゴースト柴田)

<著者プロフィール>

 競馬歴30年超のアラフィフおやじ。自分の中では90年代で時間が止まっている
かのような名馬・怪物大好きな競馬懐古主義人間。ミスターシービーの菊花賞、
マティリアルのスプリングS、ヒシアマソンのクリスタルCなど絶対届かない位置から
の追い込みを見て未だに感激できるめでたい頭の持ち主。

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