
かつての「JRA新人王」に無念の降板劇…今年の桜花賞、オークスを13番人気で5、4着に好走「これ以上、どうしろと」の声

24日、3歳牝馬のピンハイ(栗東・田中克典厩舎)が、川田将雅騎手との新コンビで西宮S(3勝クラス)へ挑むことが分かった。
今春の桜花賞(G1)5着、オークス(G1)4着と世代トップクラスの活躍を見せたピンハイ。秋は最後の一冠・秋華賞(G1)挑戦が期待されたが、陣営が「(秋華賞は)賞金的に微妙なので」と話している通り、自己条件からの再始動となる見込みだ。
ちなみに西宮Sは秋華賞と同じ来月16日に施行されるため、ピンハイがラスト一冠に挑む可能性は実質0となった。だが、素質ある3歳牝馬が川田騎手とのコンビで秋華賞当日の3勝クラスに出走となると、やはりレイパパレを思い出すファンも多いのではないだろうか。
2年前、秋華賞を除外になったレイパパレは同日の大原S(3勝クラス)に出走。単勝1.9倍という圧倒的人気に応えて古馬を蹴散らした走りには、ネット上の競馬ファンから「秋華賞で見たかった」という声が殺到した。
この年の秋華賞を勝ったのは、史上初の無敗牝馬三冠を決めたデアリングタクトだったが、それでも「幻の秋華賞馬」と称されるほどだった。
レイパパレは翌年の大阪杯(G1)でコントレイルらを破り、その評価を実力で証明している。世代トップクラスの実力を誇るピンハイも、レース後には「幻の秋華賞馬」とその存在を惜しまれることになるかもしれない。数々の名馬の背中を知る現リーディングジョッキーへの乗り替わりは、陣営にとっても心強い限りだろう。
かつての「新人王」に無念の降板劇…
その一方で、一部のファンから降板を惜しまれているのが、主戦だった高倉稜騎手だ。
「夏を順調に過ごしてくれれば、秋が楽しみです。収穫が多いレースでした」
これは今春のオークス直後の高倉騎手のコメントだ。13番人気という低評価を覆して4着に好走。「一番いいポジションで運べたし、折り合いも抜群でした」と本人も納得のレースだったに違いない。デビューからキャリア4戦すべてで騎乗し、ピンハイとは文字通り二人三脚で歩んできたが、ここで無念の乗り替わりとなった。
「ピンハイが所属する田中克厩舎は、昨年3月に開業したばかり。高倉騎手が主戦を任されたのは、普段から調教を手伝っている縁もあったと思います。
ただ、デビュー戦を7番人気で勝って、チューリップ賞(G2)でも13番人気で2着。桜花賞もオークスも13番人気で、それぞれ5着・4着に健闘しているのですから、それで乗り替わりというのは少し可哀想な気もしますね。高倉騎手だったから人気がなかった面もあると思いますが、それでももう少し長く見たいコンビでした」(競馬記者)
今回の乗り替わりには、ネット上の競馬ファンからも「良いコンビだったのに」「高倉騎手と大きなレースを勝つところが見たかった」「これは可哀想な乗り替わり」といったコンビ解散を惜しむ声が上がっている。
中には、春の健闘を評価した前出の記者と同じような視点で「(騎手として)これ以上、どうしろと……」という切実な声もあった。
だが、その一方で今回の乗り替わりを歓迎する声もあるのも当然か。
24日のレースを終えて、今年118勝で2位・横山武史騎手に18勝差とリーディングを独走する川田騎手と、ここまで4勝と苦戦が続いている高倉騎手。2人の乗り替わりが俗にいう「鞍上強化」であることは、誰の目にも明らかだ。ピンハイを少しでも大きく活躍させるための陣営の決断は、支持されて然るべきだろう。
「桜花賞では最後の直線で外側に斜行して他馬に迷惑をかけていますし、オークスでも最後の勝負所でスムーズに捌けていれば3着以内もあったと思えるような内容でした。
人気薄を上位に持ってきた高倉騎手は称賛されるべきですが、100点満点の騎乗だったかと言えば、決してそうではないと思います。気の毒な乗り替わりだとは思いますが、陣営としても、その辺りが納得できなかったのかもしれません」(別の記者)
この記者が話す通り、今年4月の桜花賞の最後の直線で斜行したピンハイは勝ったスターズオンアースを始め、6着パーソナルハイ、8着アルーリングウェイにも不利を与えてしまった。
やや強引な進路取りにも見え、レース後にアルーリングウェイの藤岡佑介騎手が「直線で間を割った時には『イケる』と思ったのですが……」と言葉を濁せば、パーソナルハイの吉田豊騎手も「着差が着差だけに『スムーズだったら』と悔やまれます」と嘆き節。
その後、JRAから高倉騎手に過怠金5万円の処分が下った。
今年4勝と苦しんでいる高倉騎手だが、デビューイヤーの2010年には37勝を挙げて最多勝利新人騎手と中央競馬関西放送記者クラブ賞を受賞するなど、輝かしいキャリアのスタートを飾っている。
しかし、新人王になったからといって将来が約束されるほど騎手業は甘くなかった。翌年にも40勝を挙げたが、これが高倉騎手のキャリアハイだ。近年は1ケタ勝利に終わることも多く、苦戦を強いられている騎手の1人といえるだろう。
そんな中で出会ったピンハイは、低迷する高倉騎手にとって大きな存在だったに違いない。コンビで挑んだ桜花賞は、20年12月のチャンピオンズC以来のG1騎乗。感情が空回りしたのか、後味の悪いレースに終わってしまった。
果たして、高倉騎手は再びピンハイに騎乗する機会を得ることができるだろうか。まずは今週末、目の前の一鞍に集中したい。
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