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偉大な父にサヨナラ……”血の飽和”に抵抗し、「近親交配」の怪物を生み出したキングマンボ

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erukondoru0223xs.jpgエルコンドルパサー(JRA公式サイト)

 20日、1頭の偉大な、そして世界の競馬シーンにとって極めて重要な位置づけをなされていた競走馬が亡くなった。

 競馬は「ブラッドスポーツ」と呼ばれ、歴史に名を残す競走馬たちの血が世界中に伝わり、それをつなげていくことで現在の世界の競馬環境を作っている。「サラブレッド種」としての”始祖”は18世紀の「3頭」のみに行き着くとされるのだから、いかに貴重な血かご理解いただけるだろう。

 現在、日本ではいわゆる「サンデー系」、つまりはサンデーサイレンスの血統を持つ馬、ディープインパクトなどが競馬界を席巻しているのは広く知られるところ。欧州ではまた別の、サドラーズウェルズ系が圧倒的な影響力を有しているという事実がある。

 こういった「1強」状態が続くことは、国の競馬を強靭なものにする反面、一つの大きな問題もふくんでいる。
それが「血の飽和」だ。

 同じ種馬の子どもばかりが大活躍することは、他の種馬の価値の低下を招くことに直結する。活躍した種馬の子がまた種馬となって活躍する仔馬を生み出し続ければ、”同じ血”を持つ馬ばかり、ようは「兄弟だらけ」になってしまい、配合の選択肢がどんどん狭められていくのである。

 偏った血統の領域はやがて限界を生み、衰退する危険性をはらんでいる。日本のサンデーサイレンス、欧州のサドラーズウェルズは、まさにその危惧をもたらした驚異的な存在なのだ。

 この日本と欧州において重要な位置づけをされたのが、どの国でも有力馬を輩出し、サンデー系ともサドラー系とも血統的な”かぶり”がほとんどない種牡馬・キングマンボである。

 キングマンボの父は、世界的な大種牡馬として知られるミスタープロスペクター、母は1980年代、牝馬ながら欧州でトップクラスのマイラーとして活躍したミエスクという、いわば”超良血”。キングマンボは、ミエスクの最初の仔だった。

 1992年にスタートした現役時代はG1・3勝という活躍だったが、世界的な良血としては物足りない印象もあったらしい。彼が真価を発揮したのは、競走馬の父となってからである。

 彼は初年度産駒から日本人にもなじみ深い”超大物”を輩出する。日本で圧倒的な活躍を見せ、欧州最高峰、フランスの凱旋門賞でも2着と、世界に最も近づいた「近親交配」の怪物、エルコンドルパサーだ。この時点で、キングマンボの種牡馬としての価値は一気に上がることとなる。

 その後も、日本では日本ダービーをレコードで勝利(当時)のキングカメハメハ。外国馬ながらジャパンカップを制したアルカセットなど、記憶に残る名馬を産み出した。海外でもレモンドロップキッドやヘンリーザナビゲーターなど、毎年のようにG1馬を輩出する大活躍を見せるのである。

 キングマンボは、日本を席巻するサンデーサイレンスとの同血率が極めて薄く、欧州のサドラーズウェルズとの配合も問題がない。生産者としても非常に使いやすい種牡馬だったといえよう。

 その血脈を受け継いだ馬も、今は父と同じポジションで価値を見出している。日本のキングカメハメハは、サンデーの血を持たない種牡馬として多数のサンデー系牝馬と交配。ディープインパクトとの激しいリーディングサイアー争いを演じている。そして、ダービー馬エイシンフラッシュの父でもあるキングズベストは世界中を回り、様々な牝馬との配合が可能。まさに父と同じ軌跡を描き、子どもたちも競馬界で存在感を示しているのである。

 父・キングマンボは老齢と衰弱によって、20日に安楽死となった。26歳。高齢まで種付けを行う生活だったことを考えれば、堂々たる大往生といえるだろう。

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