『レンブラント事件』から想起される『シンコウシングラー事件』。「JRA側の手違い」で失格になった馬の馬券が「不的中」扱いになった事件の全容とは
先週17日、福島の最終レースで出走馬のレンブラントがスタート直前にゲートを潜ってしまい、乗っていた木幡巧也騎手が落馬負傷するアクシデントがあった。
その結果、「斤量-3kg」の新人騎手を確保できなかったために減量恩恵のない騎手が代打騎乗し、さらには発馬遅延の原因となったレンブラントが外枠スタートになるという、馬券を買ったファンからすれば目も当てられないような事件があった。
この場では仮に『レンブラント事件』と呼ばせてもらうが、この事件の最も厄介なところは、これだけの処置が「馬券投票締め切り後」に行なわれたことであり、レンブラントの馬券を買った人は「斤量-3kg恩恵消滅」と「大外枠スタート」を”無条件”で受け入れる他なかったという点だ。
ただ、今回のケースは客観的に判断しても、あくまで定められたルールに則った処置であり、厳密に言えば「事件」ではなく気の毒な「事故」。まだ情状酌量の余地はあったといえる。
だが、実は過去に馬券を買った人が「この上なく理不尽な決定」を”無条件”に受け入れる他なかった『シンコウシングラー事件』と呼ばれる事件があった。こちらの方は紛れもない事件と呼べるものだ。
1999年、シンボリインディがNHKマイルC(G1)を勝った5月16日。東京競馬場の準メインのことだった。行なわれていたレースは10Rの緑風S。1600万下のハンデ戦である。不幸にもこの事件の主役となってしまう栗田博憲厩舎のシンコウシングラーは、このレースで単勝1.9倍という断トツの1番人気だった。鞍上は柴田善臣騎手だ。
レースは自体はいつも通り、ごく普通に行われた。各馬がゲートからスタートし、最後の直線では逃げ粘るエーピーグリードを、1番人気のシンコウシングラーが追い詰めるも半馬身届かずにゴール。大きな事故も審議もなく、出走全馬が無事にゴールした。
だが、シンコウシングラーは確かに2位で入線していたが、柴田善騎手と栗田調教師の手違いによって、ハンデ57㎏で出走しなければならなかったところを1.7㎏不足した55.3㎏で出走してしまったため「失格」になったというのだ。
従って、このレースの馬連と枠連(当時は他の連勝馬券がなかった)は、3着に入線した7番人気のタイカラムーンが繰り上がり9番人気‐7番人気という組み合わせ。断トツ人気のシンコウシングラー絡みの約13億円分の馬券は「不的中」として扱われた。
当然ながら、怒りが収まらないのはシンコウシングラー絡みの馬券を買っていたファンだ。
シンコウシングラーが失格になった理由は柴田善騎手と栗田調教師の手違いという、言うなれば「主催者側」の落ち度。にもかかわらず、その”ツケ”を支払う羽目になったのだから、ファンは収まりがつくはずもない。
本来ならシンコウシングラー絡みの馬券が全額返還になっても、おかしくはない事態だ。