
牧場経営者による保険金目当ての「自作自演」か。「北海道サラブレッド射殺事件」の容疑者が逮捕

今年の2月27日夜、北海道新冠町の競走馬生産牧場でサラブレッド2頭を射殺した事件があったが、今月18日、北海道警静内署によって容疑者が逮捕された。
銃刀法違反などの容疑で逮捕されたのは、事件のあった「競優牧場」の元経営者・榊明彦容疑者(60、無職)。同署によると榊容疑者は「事実です。弁解することはありません」と容疑を認めているという。射殺されたのはいずれも1歳の牡馬で、どうやら保険金が掛けられていたという情報もあるようだ。
言い換えれば、この射殺事件は「牧場経営者が保険金目当てで、所有していた幼駒を射殺した」という極めて身勝手で悪質な事件の可能性があるということだ。
実はこの「競優牧場」は、かつては2004年にJRAの顕彰馬(殿堂入り)に選ばれたタケシバオーを輩出するなど、北海道でも名門の生産牧場だった。しかし、経営者が代替わりし、時代が進むにつれて業績が悪化。今年4月には札幌地裁浦河支部から、破産手続きの開始決定を受けていたようだ。負債総額は3億円に上るという。
厳しい経営状況に追い詰められていたとはいえ、よりによって生産者にとっては我が子同然といえる自牧場の生産馬を、保険金目当てで射殺してしまった可能性のあるこの事件。
まさに経営者の「自作自演」といえる状況だが、先週の函館記念(G3)でも生産馬のマイネルフロストが出走していただけに、多くの競馬ファンにとっても胸の痛い事実だろう。犯行はサラブレッドの命の尊厳を無視した、極めて悪質なものである可能性が高い。
だが、これだけ悲惨な事件が生まれてしまった本質は、やはり現在の競馬界の「格差問題」にあると述べざるを得ない。
現在の競馬界ではノーザンファームやサンデーレーシングに代表される社台グループの一人勝ちのような状況にあり、特に力を持たない零細牧場は非常に苦しい立場にある。2011年にはかつては栄華を極めたメジロ牧場が事実上の解散となり、昨年11月にはトウショウ牧場も閉鎖。今回の「競優牧場」も間違いなく、そういった連鎖に巻き込まれた牧場の一つだ。
無論、社台グループに非があるわけではなく、過酷な競争社会の上で必然的に生じる「勝者」と「敗者」の処遇に過ぎないのだが、億単位の金銭が日常的に動く競馬界では、その格差があまりにも大きい。
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