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“あの日”から5年――震災の日に生まれ、死の危機を乗り越え栄光をつかんだ「運命の子」トーホウジャッカル


 迎えた本番、菊花賞。内枠を引いた同馬は、5番手のインコースという絶好の位置で脚を溜めることに成功。最後の直線をスムーズに抜け出すと、ワンアンドオンリーやトゥザワールドなど人気馬を置き去りにし、サウンズオブアースの追撃も振り切って見事G1制覇を達成。谷潔調教師は開業20年で初のG1制覇、デビュー149日での菊花賞制覇は史上最短、タイムは従来のレコードを1秒7も更新するなど、記録ずくめの勝利となった。淀に現れた金色のニューヒーロー誕生に、観衆は酔いしれた……。

“あの日”に生まれ、生死の境をさまよい、奇跡のような復活を遂げて世代の頂点へ……。なんとも出来過ぎたストーリーではあるが、日本中を絶望させた出来事とリンクさせ、競馬のロマンを強く感じた人も多かったのではないだろうか。

 続く15年、トーホウジャッカルはケガの影響もあってか思うような活躍ができずに終わった。しかし、彼の物語はまだ終わらない。今月20日の阪神大賞典に出走を予定しているようだ。震災から5年が経った翌週に出走というのも、また運命のようなものを感じさせる。

 逆境を越え、ひたむきに生きて栄光をつかんだトーホウジャッカルの姿は、苦境にあっても笑顔を絶やさぬよう生きる被災地の人々の姿と重なる。負の状況を越え、プラスに変えることこそが”強さ”なのだと教えてくれる。

 3月11日だけでなく、京都競馬場に秋が訪れるたび、筆者はトーホウジャッカルの勇姿と”あの日”を想い起こすのである。

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