JRAクリソベリル「5着に入れれば……」サウジC「負けても勝てる?」ノーザンの戦略とは!?
29日、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ競馬場では、3月28日のドバイワールドC(G1)に繋がるサウジCが開催される。
同レースは石油にのみ依存する産業構造から脱却したいサウジアラビアが、観光資源のひとつとなる競馬の目玉として創設した国際競走である。記念すべき第一回は、日本から昨年の最優秀ダートホースに選出されたクリソベリル(牡4、栗東・音無秀孝厩舎)とゴールドドリームが招待され、出走を予定している。
日本のダートのトップホース2頭が挑戦するとはいえ、これまで海外のダートG1を勝利した日本馬はいない(2011年ドバイワールドCのヴィクトワールピサはダートではなくAWでの優勝)。芝G1であれば、世界的に見てもトップクラスといえるものの、ダートではまだまだ、世界レベルには達していないというのが実情だろう。
現実に出走するライバルのレベルはかなり高い。ペガサスワールドC(G1)を勝ったムーチョグスト、昨年の米最優秀3歳牡馬マキシマムセキュリティのほか、19年のブリーダーズC(G1)2着マッキンジー、18年のドバイターフの勝ち馬ベンバトル、昨年のドバイワールドC(G1)2着グロンコウスキーなどの強豪ばかり。英大手ブックメーカー「bet365」でのオッズは、クリソベリルは7番人気、ゴールドドリームは12番人気と下馬評が低いのはやむを得ないといえる。
では、なぜそんな勝ち目が薄いレースをあえて使うのか?
その答えは、主催者の招待馬における「破格の好待遇」にあった。
サウジCを含め、当日の全レースが、主催者が遠征費用を負担する完全招待制になっており、1月7日に締め切られた第1次登録の段階では、登録料も無料だったというのだから驚きである。国際グレードのつかないパート3国の新設レースに、ここまで世界中から実力馬が集まったのもこういった背景が大きく影響したことは想像に難くない。
まずは1着11億円という賞金のインパクト。賞金世界2位のドバイワールドC(G1)は、7億9,200万円と非常に高額だが、登録料も約12万ドルと高い。これは日本円に換算すると1000万円を超す。対するサウジCの登録料が無料なのは、基本的に数百万円の登録料が当たり前である海外の競馬では異例中の異例といえる。
「通常、海外遠征をするには莫大な費用がかかります。例えばキャロットクラブ所属のクリソベリルのようにクラブ馬が遠征するとなると、その費用は出資した会員が負担することになります。ところが、今回のように主催者全額負担であれば、出資者の理解も得やすいでしょうね」(競馬記者)
「普通に走ればマキシマムセキュリティは断然でしょう。実力は抜けていると思います。日本の馬は5着に入れれば。5着でも1億円以上の賞金ですから」
今回、クリソベリルとゴールドドリームの2頭を出走させるノーザンファーム吉田勝己代表のコメントからは、意外にも勝ち負けへの期待はあまり感じられない。期待が薄くともあわよくば5着にでも来てくれれば、フェブラリーS(G1)の優勝賞金より高いのだ。
幸いにも主催者側が、費用を全額負担してくれるため、負けたとしてもリスクも少ない。見方を変えれば、ローリスクハイリターンを地で行く戦略ともいえるのではないだろうか。また、結果いかんでは今後の日本馬のダートの選択肢となる可能性も出て来る。
思わぬ好走をしてくれれば儲けもの? われわれ競馬ファンとしてはあっと驚く快走に期待したいものである。
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