JRA藤沢和雄「下手なのは岡部だけ」。通算1517勝の“原点”……「27年前」のマイルCSで名伯楽にG1初制覇をもたらした名牝
22日、阪神競馬場で開催されるマイルCS(G1)。数々の名マイラーが誕生したこのレースを4勝している調教師がいる。
日本が誇る名伯楽・藤沢和雄調教師だ。今年は、1番人気が予想されるG1・3勝馬グランアレグリアを送り込み、このレース5勝目を狙う。
これまでJRA通算1517勝、重賞122勝、G1・31勝を記録している藤沢和雄調教師だが、決して環境に恵まれていたわけではなかった。1987年に調教師免許を取得し、開業したのは翌88年。当時は栗東トレセンに坂路が完成したばかりで、関西馬がG1タイトルをほぼ総なめ状態。美浦所属馬は施設面で大きなハンデを背負っていた。
藤沢調教師も、1年目の1988年はわずか8勝しか挙げられず、全国リーディング183位と苦しいスタートを切った。しかし、89年に15勝、90年には22勝を挙げ、徐々に頭角を現していく。
そして開業4年目の91年には36勝を挙げ、初の関東リーディングトレーナーに輝いた(全国リーディング6位)。そして藤沢調教師にとって、原点となる馬が登場したのがその年の11月のことだった。その馬こそ2年後のマイルCSで厩舎に悲願をもたらすことになるシンコウラブリイだ。
91年に飛躍を遂げたとはいえ、重賞レースでは連戦連敗。91年暮れには、2戦2勝のシンコウラブリイで阪神3歳牝馬S(G1)に挑んだが、3着に敗れていた。
そんな藤沢調教師に初めての重賞タイトルをもたらしたのも実はシンコウラブリイだ。92年6月のニュージーランドT4歳S(G2)で、ヒシマサルやサクラバクシンオーという強豪牡馬を相手に難なく勝利を飾った。シンコウラブリイは、その後もとんとん拍子で勝ち進み、重賞4連勝で秋のマイル王決定戦・マイルCSに駒を進めた。
混戦ムードの中、4歳(現表記で3歳)牝馬ながら1番人気に支持されたシンコウラブリイ。しかし大きく立ちはだかったのが前年の覇者ダイタクヘリオスだった。外々を早めに進出したダイタクヘリオスに対し、シンコウラブリイも道中前目につけたが、4角でやや置かれる形となり、直線でようやく加速した時には、ダイタクヘリオスに決定的な差をつけられていた。1番人気に応えることが出来ず2着に敗れ、G1タイトルは持ち越しとなった。
翌年春は、確勝を期して臨んだ安田記念(G1)で3着に敗れ、またしてもG1制覇はお預け。照準を再びマイルCSに定めた。秋は毎日王冠から始動し、スワンSと重賞を2連勝。そして悲願を懸けて2度目のマイルCSに臨んだ。
人気を分け合ったのは、すでにG1を3勝していた同世代の名牝ニシノフラワー。勝敗を分けたのはレース直前に降った大雨。不良馬場まで一気に悪化した京都競馬場で、ニシノフラワーはぬかるんだ芝に脚を取られ見せ場なく惨敗した。一方、シンコウラブリイは好発から先行し、4角で外に持ち出すと、あとは逃げるイイデザオウを交わすだけという横綱相撲で完勝。藤沢調教師に悲願のG1初制覇をもたらした。
シンコウラブリイはこのタイトルを手土産に引退し、繁殖入りした。藤沢調教師はその後もタイキシャトルやシンボリクリスエス、ゼンノロブロイなど次々と名馬を輩出した。
藤沢調教師は「シンコウラブリイに乗って負けた下手な騎手は、岡部だけだよ」と冗談交じりに話したというエピソードもある。それだけ相当思い入れが強く、自信のある馬だったということだろう。
シンコウラブリイが挙げたG1勝利は1つだけだったが、それはまさに厩舎の原点となる貴重な1勝だった。
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