有馬記念を巡るJRAの行き過ぎた温情!? 武豊ディープインパクトがセーフでR.ムーアはアウト!? オルフェーヴル池添謙一は騎乗停止「実質0日」
今年も有馬記念(G1)の季節がやってきた。
昨年は、単勝1.5倍に支持された女王アーモンドアイが馬群に沈んだ一方、もう1頭の女王リスグラシューが5馬身差で圧勝し、有終の美を飾る衝撃的なレースだった。
一方、そんな歴史的なレースを演出したのが、中央競馬を主催するJRA(日本中央競馬会)の「粋な計らい」だ。
実はリスグラシューの主戦D.レーン騎手はすでに短期免許の期間を終えており、本来であれば日本で騎乗することができなかった。しかし、JRAが特例処置を取り、特別に有馬記念当日だけ騎乗できるようになったのだ。
これにはリスグラシューを管理する矢作芳人調教師も「これがリスグラシューにとって最後のレースなので、ファンが一番望んでいるのはレーン騎手が乗ることだろうし、我々もそれが納得できる形」とJRAの対応に感謝していた。
そんな空気が読める主催者でもあるJRAだが、過去の有馬記念では「空気を読み過ぎた?」ことも……。
2006年の12月、日本競馬の第一人者となる武豊騎手が香港遠征中に落馬事故の原因となり、香港競馬から騎乗停止の制裁を受けている。
ただ、よりによって間近に迫っていた有馬記念が「近代競馬の結晶」ディープインパクトの引退レースとなれば、このニュースが日本中の競馬ファンを震撼させたことは想像に難しくないだろう。
武豊とディープインパクトといえば、平成競馬の代名詞のような存在であり「昭和のアイドル」だったオグリキャップに匹敵する人気を誇っていた。まさに当時の競馬における売り上げの根幹的な存在であり、日本競馬最大のイベントとなる有馬記念でディープインパクトの鞍上に武豊騎手がいないなど、競馬ファンにはあってはならないことだし、JRAも考えたくはなかったに違いない。
その上で、香港競馬が出した最終的な回答は、武豊騎手の騎乗停止期間を「有馬記念の翌日からにする」というもの。”災難”を免れた武豊は有馬記念を制し、ディープインパクトの引退の花道を飾ったのだ。JRAと香港競馬が空気を読んだ温情制裁といえる。
もう一例は2011年の12月、今度は有馬記念でオルフェーヴルの騎乗を控えた池添謙一騎手が、やはり遠征先の香港で騎乗停止の制裁を受けた例だ。
オルフェーヴルと池添のコンビも、ディープインパクトと武豊と同様、競馬史上に残る”三冠コンビ”であり、有馬記念のファン投票も断トツの1位。述べるまでもなく当時の競馬の売り上げの中心である。
そんな名コンビも香港競馬の制裁により、あわや解散の危機に瀕したが、5年前の”ディープインパクト事件”と同様、池添の騎乗停止期間が有馬記念の翌日からという結果となり、池添はオルフェーヴルとともに有馬記念を制した。
一方、2015年には有馬記念でラストインパクトに騎乗予定だったR.ムーア騎手が、やはり香港で騎乗停止の制裁を受けた。これも武豊騎手や池添騎手の例に倣えばセーフかと思われたが、結果はアウト……。
ムーア騎手が有馬記念で騎乗予定だったラストインパクトは、前走のジャパンC(G1)で惜しい2着と明らかに上り調子で、有馬記念でも間違いなく有力視される一頭だった。しかしムーア騎手が騎乗停止となったため急遽、若手の菱田裕二騎手に乗り替えざるを得なくなったのだ。
また、池添は香港競馬が下した騎乗停止期間にJRAのレースが開催されないという理由で実質「騎乗停止0日」などという処分となったのだから、驚きを通り越して開いた口が塞がらない。
……ルールとは一体何なのか。
「ディープインパクトの時は、ちょうど香港競馬の騎乗停止におけるルールが変わった時で、武豊騎手や池添騎手はルール変更の恩恵に預かった形のようですね。
ムーア騎手の場合も当初はそのルールが適応されたのですが、あくる日に2度目の制裁を重ねてしまった結果、有馬記念後だけでなく有馬記念自体にも乗れなくなってしまったようです。こういったケースは香港だけでなく、フランスなども同様です」(同)
なるほど……仏の顔も三度までならぬ、二度までということなのだろうか。
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