JRA金鯱賞(G2)デアリングタクトは「燃え尽き症候群」に注意!? 牝馬三冠馬の復帰初戦は……
今週の金鯱賞(G2)には、昨年JRAで初めて無敗の牝馬三冠を達成したデアリングタクトが出走する。牝馬三冠を達成しただけでなくジャパンC(G1)ではあのアーモンドアイやコントレイルと接戦を演じており、クロノジェネシスと並ぶ牝馬最強クラスの実力馬と言ってもいいだろう。
そのデアリングタクト陣営が復帰戦に選んだのは金鯱賞だが、多くの競馬ファンは同馬が負ける姿を想像していないのではなかろうか。しかし過去の牝馬三冠馬の復帰戦を見てみると、意外にも苦戦傾向にあり、ここも絶対とは言い切れない状況にある。
秋華賞が設立されて以来これまで5頭の牝馬三冠馬が誕生した。スティルインラブ、アパパネ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイ、そしてデアリングタクトだ。デアリングタクト以外の成績を見てみると、前述のとおり復帰初戦は苦戦傾向にある。
■牝馬三冠達成馬の年明け初戦
スティルインラブ
金鯱賞(G2)8着
アパパネ
マイラーズC(G2)4着
ジェンティルドンナ
ドバイシーマC(G1)2着→宝塚記念(G1)3着
アーモンドアイ
ドバイターフ(G1)1着→安田記念(G1)3着
唯一アーモンドアイはドバイターフ(G1)を快勝しているものの、その後の国内初戦の安田記念(G1)は3着に敗退。言い換えれば、牝馬三冠馬の国内初戦はすべて敗退しているのである。これはなぜなのか
そもそも牝馬は牡馬と比較して非常にデリケートであり、また将来母親になる馬ということもあって、競走馬としてのピークを迎えるのが早いという見方もある。実際に社台グループが6歳春で牝馬を引退させるのは、そういった事情があるからだと言われている。加えて競走馬は血統的に早熟型と晩成型と分かれており、3歳時の偉業である牝馬三冠を達成するということは、どちらかといえば早熟傾向にあると言えるだろう。
そういった意味では、古馬になっても多くのG1を勝利したアーモンドアイやジェンティルドンナは、かなり例外的存在と言ってもいい。逆にスティルインラブは古馬になって8戦全敗、アパパネは9戦1勝など、3歳時ほどの輝きを見せることはできなかった。デアリングタクトも同様に3歳時で燃え尽きてしまっている可能性は否定できない。
確かにJRA初の無敗の牝馬三冠という偉業は称えるべきものがある。しかし同年代のレベルを疑問視する声も少なくない。オークスで2~3着だったウインマリリンとウインマイティー、秋華賞2着マジックキャッスル、3着ソフトフルートなど、中長距離戦で牡馬相手に結果を出している馬はいない。
またデアリングタクトの父エピファネイアは多くの活躍馬を出しているが、今年に入ってデアリングタクトの世代はわずか5勝。今年の産駒17勝中12頭が3歳馬で、4歳馬は5勝しかしていないのである。これは父エピファネイアの成長力が少なからず影響しているという見方もある。
さらにこの金鯱賞は、最後に牝馬が勝利したのが1995年のサマニベッピンまで遡る。過去を見てもリスグラシュー、モズカッチャン、デニムアンドルビー、ルージュバック、カワカミプリンセス、アドマイヤグルーヴ、そして牝馬三冠馬スティルインラブといった牝馬の強豪が敗退している。時期やコースは違えど、この金鯱賞は牝馬が敗退してきたレースでもあるのだ。
以上のような様々な要因が重なり、この金鯱賞でデアリングタクトが圧倒的なパフォーマンスを見せられるとは言い難い状況にある。もちろん初めてJRAで誕生した無敗の牝馬三冠馬。過去のデータを吹き飛ばすような圧倒的な走りを見せるかもしれない。しかし競馬は歴史を繰り返すもの。この傾向がある限り、デアリングタクトの復帰戦は人気以上に大きな不安を感じさせる。
しかし同馬は、さらに歴史に名を刻むためにも、これからコントレイルやグランアレグリア、そしてクロノジェネシスといった大きな壁を相手にしなければならない。その壁を乗り越えられるかどうか、まずはこの金鯱賞でどんな走りを見せるか注目したい。
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