JRA「中京の鬼」福永祐一の神騎乗でインディチャンプ戴冠まであと一歩。高松宮記念(G1)マイル王から転身失敗……秋のスプリント挑戦に残された課題
28日、中京競馬場で行われた電撃の桶狭間決戦・高松宮記念(G1)は、川田将雅騎手の2番人気ダノンスマッシュが勝利。1番人気レシステンシアとの接戦をクビ差で制し、待望の国内初G1制覇を成し遂げた。
上位人気馬による熱戦が繰り広げられた春のスプリント王決定戦だが、3着に入った3番人気インディチャンプ(牡6、栗東・音無秀孝厩舎)と福永祐一騎手のコンビも春秋マイル王の名に恥じない走りを見せた。
「1200mの流れにも乗れて、反応良く最後まで脚を使いました。外を回ることなく、距離ロスのない形でバランス良く走れていました」
福永騎手がコメントした通り、スプリント戦の適応に前進が見られたインディチャンプ。昨年暮れの阪神C(G2)、2月の阪急杯(G3)では1400mの速い流れに対応できず、追走に手間取って、持ち前の末脚を駆使しても前の馬を捉え切れずに人気を裏切る惜敗を繰り返した。
トップマイラーとはいえ、距離が1ハロン短縮した1400mでスピード不足を露呈。距離がさらに1ハロン縮まる上にG1レースとなる高松宮記念は、今後の路線選択の重要な試金石となった。
18頭立てのレース。インディチャンプはジャンプするような格好ながら絶好のスタート。福永騎手はパートナーを促してまずは行き脚をつける一方で、冷静に周りの状況も把握していた。
昨年の覇者モズスーパーフレアが大方の予想通りにハナに立つ展開。これをダノンファンタジー、ラウダシオン、セイウインコウセイが追い掛けて、前半3ハロンは34秒1の激しい先行争い。福永騎手は前と離され過ぎないようにポジションをキープしつつ、外を回さないように内から進路を模索する。
そして迎えた最後の直線、馬群の壁が居並ぶ外とは逆に、内のダノンファンタジーとレッドアンシェルとの間に1頭分のスペースが現れた。勿論このチャンスを福永騎手も見逃すはずがない。
針の穴を通すように”Vロード”を駆け抜け、逃げ粘るモズスーパーフレアを交わしたインディチャンプ。だが、先頭に立ったのも束の間、外から猛然と追い上げたダノンスマッシュとレシステンシアに交わされ、あと一歩のところで勝利がスルリと逃げてしまった。
「さすが『中京の鬼』といえる見事な手綱捌きでした。中京を得意としている福永騎手らしい冷静な判断が光りましたね。主戦場のマイルから距離を短縮したこれまで2戦で、勝つためには何が必要なのかを試行錯誤したことが伝わるレース運びだったと思います。
内からロスなく抜け出した進路取りもハマりました。もし、外を回すような格好になっていれば、3着も怪しかったかもしれません。底力を見せたインディチャンプも立派でしたが、福永騎手とのコンビだからこその激走だったともいえそうです」(競馬記者)
しかし、これでインディチャンプ陣営にとってスプリント戦の不安がなくなったわけでもない。
今年の高松宮記念は雨の影響で重馬場の開催となったため、勝ち時計の1分9秒2は昨年の1秒8秒7より0秒5遅かった。例年より時計も掛かって底力を問われるレースだったという側面もある。
福永騎手が一発狙いにも映ったイン突きを成功させ、これ以上ない展開でも敗れてしまったインディチャンプ。秋のスプリンターズS挑戦を見据えると、課題の残った高松宮記念だったといえるのかもしれない。
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