JRA “幻の高松宮記念馬”で岩田康誠が「幅寄せ」を再現!? 復活請負人の本領発揮も……、騎乗停止処分明けガッツポーズに残った後味の悪さ
9日、東京競馬場では3歳マイル王を決めるNHKマイルC(G1)が開催され、大きな注目を集めたが、裏開催にあたる中京競馬場もまた、別の意味で注目されていた。
この日は、24日の阪神競馬で「他の騎手に対し粗暴な行為に及んだ」として、25日から5月8日まで14日間(開催4日)の騎乗停止処分が下された岩田康誠騎手の復帰初日。処分の原因とされたのは返し馬の際、藤懸貴志騎手に対してラチ沿いまで幅寄せを行い、暴言を吐いたという“粗暴な行為”によるものだった。
前代未聞の事件ながらもわずか4日間の騎乗停止という処分には、一部の関係者や競馬ファンからも甘過ぎるのではないかという声も出ていた。
その一方、渦中の人である岩田康騎手は中京競馬場で12レース中10鞍に騎乗。騎乗馬の内訳も1番人気5頭、2番人気3頭、3番人気1頭と豪華なラインアップ。世間の風当たりとは逆に、勝ち負けを期待できそうな有力馬が集まった。
しかし、有力馬の騎乗が続いたものの、馬券圏内の好走に留まり8連敗で残るは2鞍のみ。このまま何事もなく終わるかに思われた矢先、メインレースの鞍馬S(OP)での行いが物議を醸す結果となった。
岩田康騎手の騎乗馬はクリノガウディー(牡5、栗東・藤沢則雄厩舎)。近走は二桁着順の大敗も珍しくないスランプに陥っていたが、昨年の高松宮記念(G1)で1位入線しながら、斜行により4着に降着した“幻の高松宮記念馬”である。G1で好走した中京芝1200mの舞台で復活を期待された同馬は、2番人気に支持された。
15頭立てのレースはハナを主張したエレナアヴァンティをケイアイサクソニーが追い掛けて前半3F32秒8という超ハイペースで流れた。2頭がそのまま並行する格好で最後の直線に入ったところで、外から猛然と追い上げてきたのがクリノガウディー。
残り200mを切ったところで一気に先頭に躍り出ると、追い込んできたナランフレグの猛追を3/4馬身差で振り切って勝利した。最強の1勝馬ともいわれたクリノガウディーだったが、待望の2勝目は18年10月のデビュー勝ちから2年7カ月ぶりに味わった勝利の美酒となった。
だが、最後の直線コースで内側に斜行したことでクリノガウディーに騎乗した岩田康騎手に対して過怠金10000円が課されただけでなく、ゴール後のガッツポーズには、「反省をしていないのではないか」という声が聞かれたのも無理はない。
「クリノガウディーの斜行に関しては高松宮記念と同様でもあり、一概に岩田康騎手を責めても仕方のない部分ともいえそうですが、さすがにガッツポーズはマズかったですね。
また、偶然とはいえ直線で内へ切り込んだ際に、前を走っていたのは藤懸騎手のケイアイサクソニー。まるで“再現VTR”のような幅寄せとなったことも事件を連想させます」(競馬記者)
勿論、悩める実力馬を勝利へ導いた岩田康騎手の手腕はさすがである。
昨年秋のスワンS(G2)では、11番人気カツジで大波乱の主役になり、今年の京都金杯(G3)でも12番人気ケイデンスコールで鮮やかな勝利を決めている。いずれも以前は活躍しながら、その後はスランプに陥っていた馬。今回のクリノガウディーも同じようなケースであり、“復活請負人”といっても過言ではない見事な手綱捌きだった。
実力は申し分ないトップジョッキーの一人なだけに、マスコミに対する相変わらずのコメント拒否、火に油を注ぐガッツポーズはなんともいえない後味の悪さが残った。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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