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「珍名馬」ババヲナラスクルマが誕生した前代未聞の大事件! 不祥事連発の笠松競馬で実況アナも唖然茫然、一歩間違えれば大惨事だった伝説の競走不成立

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 芦毛のアイドルホース・オグリキャップを世に送り出した笠松競馬。今なお競馬ファンから絶大な人気を誇る名馬の故郷にもかかわらず、不祥事を連発している。昨年8月に騎手、調教師ら4人が不正馬券購入問題で引退。これら「八百長疑惑」の関係で、笠松競馬は1月下旬から現在も開催自粛となっている。

 それだけではなく、所属騎手1人が組合管理者指示事項に違反していたことが判明。元・地方競馬騎手が、3月上旬にSNS上で実施した懸賞で金銭を授受していたことも明るみに出た。

 そんな笠松競馬だが、レースでも「前代未聞の大事件」が発生したのが約10年前のこと。2011年1月7日、笠松競馬場で行われた第3R・若竹特別(ダート1800m)のレース中に起こった「ババヲナラスクルマ事件」はもはや伝説となっている。

 レースは5頭立て。フサイチフウジンが先手を主張してハナへ。これを追ってマイネルブラジリエが2番手につける。2頭から2馬身、3馬身離れてリックチャー、オペラテンシ、セイウンロデムが3頭一団となって追う展開。3コーナーを過ぎて逃げていたフサイチフウジンとマイネルブラジリエの差が徐々に開き、最終コーナーを抜群の手応えで迎えた。

 だが、このときに誰もが目を疑うようなアクシデントが発生する。

 本来であれば、直線でいるはずのなかったハロー車(レース後にダートの砂を均すため、ハロー掛けをする車)が2台、いままさにレース中にもかかわらず動いていたのである。

 レース後ならまだしもレース中、最後の直線にハロー車がいることは、安全面においては勿論のこと、公正競馬を行うにもありえない。レースに騎乗していた騎手も驚きを隠せなかったであろうことは容易に想像がつく。2頭は大外に持ち出し、残る3頭は左右にハロー車をすり抜け、5頭全馬が無事にゴールを通過したことで事なきを得た。

「先頭は3番フサイチフウジン、2番手には4番マイネルブラジリエ……」

 実況アナウンサーは何とか平静を保とうとしたが「直線コース」と続けた後、約10秒ほどの長い沈黙……、「直線コース、ババヲナラスクルマが2台出ております」と説明し、辛うじて「3レースは審議です」と話すのが精一杯だった。

 勿論、レースは不成立。馬券に投票された総額786万2000円は全額返金となった。ネットやSNSでは「笠松大障害」などと例えて笑い話にされていたが、一歩間違えれば騎手や競走馬が巻き込まれる大惨事となる恐れもあった。

 このような事態となった背景は1周半を回る1800m戦だったレースで、ハロー車の運転手が半周で終わる800m戦と勘違いしていたことが原因だったことが後に判明する。

 これに対し、岐阜県地方競馬組合は、「深くお詫びし以後、このようなことのないよう、真摯に開催業務を遂行します」と反省の弁を述べたが、謝って済むレベルともいえず、ファンからは競馬史に残る大事件として、現在でも語り継がれている。

 ただ、そんな状況下でプロフェッショナルな仕事を見せたのが実況を担当していた藤原健一アナだ。ザワついていた場内の様子からアクシデントを察知、レース不成立が決定前だったこともあって、冷静に実況を最後まで貫き通したことはさすがだった。

 その一方で、ハロー車という言葉がとっさに出なかったため、「ババヲナラスクルマ」と表現したことが、競馬ファンの遊び心を刺激した。9文字で競走馬の名前に似ていたことで、ハロー車がまるで“珍名馬”のような扱いとなってしまった。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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