
JRA福永祐一「冷静と情熱のあいだ」で無敗エフフォーリア撃破! “ダービーの重みを知る”苦労人が厳しさ教えた殊勲星…… シャフリヤールでコントレイルに続くダービー連覇

30日、東京競馬場で行われた競馬の祭典・日本ダービー(G1)は、福永祐一騎手の4番人気シャフリヤール(牡3、栗東・藤原英昭厩舎)が優勝。皐月賞馬エフフォーリアとのゴール前の叩き合いをハナ差で制し、無敗の二冠を阻止した。
「決してスムーズな騎乗ではなかったですが、本当に馬の力に助けられた勝利だったと思います。最後の最後まで素晴らしい末脚を使ってくれました。(どちらが勝ったのか)引き上げてくるまで分からなかったです」
福永騎手がそう振り返ったように、シャフリヤールにはタイトで厳しい展開だった。少し時間が経った勝利騎手インタビューで心境を聞かれた際、ようやく「冷静と情熱のあいだでした」と返す気持ちの余裕もできた。※本人が意識していたかどうかは不明だが、『冷静と情熱のあいだ』は、1999年に出版された恋愛小説であり、2001年に公開された日本映画。
17頭立てのレース。好スタートを決めたシャフリヤールは、インを走るエフフォーリアを斜め前方に見る位置。大本命馬をマークするには絶好のポジションにも思われたが、一転して苦しくなったのは最後の直線入り口だ。
前に馬群の壁が横一列に並んだこともあり、大幅に進路を外に取る必要に迫られた。外を回さざるを得なかったシャフリヤールは、最後の直線半ばでも再び進路が塞がるピンチ。何とか前を行くサトノレイナス、ワンダフルタウンと外のアドマイヤハダルの間に生まれた1頭分のスペースを見つけると、ここでようやくGOサインを出せた。
後はもう福永騎手もパートナーの力を信じて渾身のムチを振るうだけ。無我夢中で追い続けた結果、わずかハナ差でライバルを捉えたところがゴールだった。
本人も「馬の力に助けられた勝利」と謙遜したが、「ダービーを勝つことの難しさ」を嫌というほど知っているのが福永騎手だ。ダービー初騎乗となった1998年、キングヘイローとのコンビでは、重圧の前に14着と苦い経験も味わった。その後も2007年のアサクサキングスで女傑ウオッカの2着。13年のエピファネイアでは、ゴール寸前で武豊騎手のキズナに交わされてゴール前で肩を落とす姿もあった。
だが、ワグネリアンと挑んだ18年に待望の初優勝。父・洋一さんも勝てなかった福永家の悲願を達成すると、コントレイルと挑んだ20年には早くも2勝目。これまで、自身に「足りていなかったもの」と引き換えに手に入れたのはダービージョッキーとしての自信だったのかもしれない。
「福永騎手といえば、どちらかといえば“持ってない”イメージが強かったですが、ダービー初勝利を遂げてからは、かつてとは見違えるような冷静な手綱捌きが目立つようになりました。直線での進路選びも素晴らしかったです。一歩間違えれば前が壁になってしまうところを、上手くすり抜けて来ました。
エフフォーリアとの着差はわずか“ハナ差”でしたが、これはまだ若い横山武史騎手との経験の差だったともいえそうです。横山武騎手も敗れたとはいえ、この経験を糧に成長していくと思います」(競馬記者)
福永騎手は18年ワグネリアン、昨年のコントレイルに続き、これでダービー3勝目。過去、ダービー連覇は武豊騎手、四位洋文騎手の2人しか成しえなかった偉業に3人目として名を連ねた。
何度も壁にぶつかって来た苦労人が、快進撃を続ける若手騎手にダービーの重みを教えた殊勲星だったといえる、そんな今年のダービーだった。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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