JRA伝説レコード「1:57.8」サッカーボーイの謎に迫る。1988年から「32年間」不滅、最有力は当時の函館が「洋芝ではなかった説」だが……
サッカーボーイがデビューを迎えた1987年の8月9日。実は、その前日には翌年のダービー馬サクラチヨノオーが単勝1.0倍に応えて、堂々のデビューを飾っていた。しかし、そんなクラシックの主役候補の話題が1日で塗り替えられてしまったのは、その翌日にサッカーボーイが衝撃的なデビューを果たしたからに他ならない。
芝1200mでデビューしたサッカーボーイは、函館の不良馬場をものともせず、2着以下を9馬身以上突き放して圧勝。ちなみに2着馬は後に重賞を2勝するトウショウマリオである。
次走の函館3歳S(G3、当時)こそ後方から脚を余して敗れたが、続くもみじ賞(OP)では再び後続に10馬身差で圧勝。2着は後のシンザン記念(G3)の覇者ラガーブラックである。
そういった経緯から、サッカーボーイが暮れの大一番・阪神3歳S(G1、当時)で単勝1.9倍の1番人気に推されたのも当然だろう。本馬はほぼ直線だけの競馬で、やはり2着以下に8馬身以上の差をつけて圧勝。当時のレコードを0.6秒も更新し、すでにこの時「テンポイントの再来」とまで言われていた。
サッカーボーイの“異常性”を如実に物語っているのは、その後の戦績だ。本馬はその後、単勝1.6倍に支持された弥生賞(G2)で3着に敗れると、続くNHK杯(G2)でも4着と連敗。それにもかかわらず、続く日本ダービー(G1)で1番人気に支持されているのだ。
皐月賞をパスするなど似たようなケースでのダービー1番人気は、2018年のダノンプレミアムが記憶に新しい。だが、本馬は前走の弥生賞でその年のダービー馬ワグネリアンに完勝した経緯があった。はっきり言って、サッカーボーイの臨戦過程でのダービー1番人気は、近代競馬ではあり得ないと述べても過言ではないだろう。
逆に言えば、それだけ当時の競馬ファンがサッカーボーイを「底知れないモンスター」として恐れていたということだ。
また、ダービーこそ距離が長すぎて15着に大敗したが、続く中日スポーツ賞4歳S(G3、当時)では、その年の皐月賞馬ヤエノムテキ以下を一蹴。そんな経緯で迎えたのが、伝説のレコードが生まれた函館記念だった。
この年の函館記念は施行時期の影響もあって、今では考えられない豪華メンバーだった。
3年前のダービー馬であり、凱旋門賞(仏G1)など世界を股に掛けて戦ったシリウスシンボリを筆頭に、前年のダービー馬メリーナイス、前年の牝馬二冠馬マックスビューティらが激突。
ただ、それでも1番人気に推されたのは、サッカーボーイだった。
レースはメイショウエイカンらが玉砕覚悟で飛ばし、前半の1000m通過が57.7秒という超ハイペース。しかし、それを中団から勝負どころの3・4コーナーで捲るレースをすれば、後続がついて行けないのも当然か。結局、サッカーボーイはメリーナイスに5馬身差をつけて圧勝している。
記録した1:57.8は函館どころか日本レコードであり、当時はまだ芝2000mで1分57秒台を記録したことすらなかった。
当時、サッカーボーイの主戦を務め、現役最強のオグリキャップにも騎乗経験のある河内洋騎手は、2頭について「1600mならオグリキャップ、2000mならサッカーボーイ」と語っている。最終的にその年の有馬記念(G1)、つまりは現在でいう3歳一杯でターフを去ったサッカーボーイだが、すでに現役最強級の評価を得ていたのだ。
最後にこの函館・芝2000mで1:57.8という永久不滅級のレコードは、やはり当時の馬場も然ることながら、ずば抜けた本馬のパフォーマンスが成し遂げた記録なのだろう。果たして、偉大なるレコードホルダー・サッカーボーイはいつまでその名を刻み続けてくれるのか。今年も函館記念の季節がやってきた。(文=浅井宗次郎)
<著者プロフィール>
オペックホースが日本ダービーを勝った1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)
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