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JRA過去1年でわずか1勝……「長距離戦は騎手で買え」の格言は通用せず?全国リーディングをひた走るC.ルメール唯一の“不適性距離”とは?

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JRA過去1年でわずか1勝……「長距離戦は騎手で買え」の格言は通用せず?全国リーディングをひた走るC.ルメール唯一の不適性距離とは?の画像1

 先週の札幌競馬で、ダート1000mのレースに2度ほど騎乗したC.ルメール騎手。14日の3Rは5番人気のザント、15日の9Rは1番人気に推されたミエノワールドに騎乗したが、それぞれ最下位、4着と敗れ、いずれも馬券圏外に終わってしまった。

 誰もが認めるトップジョッキーのルメール騎手とはいえ、ダート1000mは苦手条件といえるのかもしれない。先週の2鞍を含め、昨年7月から今年の8月15日現在の約1年間。函館と札幌のダート1000mで15戦してわずか1勝。勝率はたった6.7%と散々な成績である。昨年204勝、今年も15日まで115勝を挙げているリーディングジョッキーにも、“不適性距離”が存在しているようだ。

 2017年から、4年連続JRA最多勝を記録しているルメール騎手。多くの競馬関係者も認める、そのストロングポイントを挙げればきりがない。

 メンタルはもちろん、フィジカル面も秀逸。下半身の柔らかさだけでなく、腕力は他の日本人騎手以上ともいわれているその類まれなパワーで、引っ掛かる馬をなだめる「折り合い力」は素晴らしく、過去には幾多の“神”騎乗を披露してきた。

 2004年のジャパンC(G1)では、東京競馬場の芝2400mを舞台に「折り合いに難あり」といわれたコスモバルクをピタリと番手で折り合わせて、2着に導く好騎乗。09年の同レースでも、やんちゃでナイーヴなイメージのあるウォッカと折り合いをつけて、見事優勝を果たした。

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 ルメール騎手が近年でその「折り合い力」を遺憾なく発揮したのが、フィエールマンとのコンビだろう。3歳時には、道中2度の坂超えを経験する3000mの菊花賞(G1)を制覇。古馬になってからも同じ淀の舞台で200m延びた3200mの天皇賞・春(G1)を連覇するなど、長距離戦を総ナメ。「長距離戦は騎手で買え」とは昔から伝わる競馬格言だが、まさにルメール騎手は数々の長距離レースで、その格言を証明してくれた。

 こうした長距離戦と、一線を画するのが函館・札幌のダート1000m。ルメール騎手がその「折り合い力」を披露するチャンスは、必然的に少なくなるのかもしれない。

 1分未満でゴールまで突っ走る、JRAのレースなかでも最短距離戦の1000m。とにかく出遅れたらジ・エンド。さらに道中は、騎乗テクニックよりも「なにがなんでもハナに立つ」といったガッツも必要で、ある意味ジョッキーの騎乗技術ではどうにもならない距離でもある。

 実際、レース後の敗因を問われた騎手たちは「出遅れがすべて」「(1000mは)忙しかった」などと証言するケースも多い。結果的にルメール騎手のストロングポイントは活かされることなく、他の騎手との差もそれほど生まれないことが、過去1年間の成績に結びついているのではないだろうか。

 今夏の札幌開催は、あと6日間。残り少ないダート1000mで“不適性距離”を返上できるか、ルメール騎手の手綱さばきを注意深く見守りたい。
(文=鈴木TKO)

<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。

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