JRA 三冠トレーナーの忘れ形見が残した3連単139万円の置き土産、あまりにも早過ぎた恩師の訃報、弔い合戦で見せた「成長」の証
5日、新潟競馬場で行われた9R・飯豊特別(2勝クラス)は木幡初也騎手騎乗の9番人気エムオーシャトル(牝3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)が勝利した。
夏の新潟開催最終週に行われた内回りの1200m戦。14頭立ての13番からトップスタートを切った同馬は、内から先手を主張する馬を見る2番手の位置を確保する。
前半3ハロン34秒9と、同日に同コースで行われた2歳未勝利戦と同じペースで直線を迎える。スローペースとはいえ、最終週特有の外が伸びる馬場だ。木幡初騎手はギリギリまで追い出しのタイミングを待った。
ゴールまで残り200mを切ったところで木幡初騎手のステッキが入ると逃げ馬を交わし先頭へ。外から1番人気アヴェラーレが猛然と追い込んでくるが、ゴールまで先頭の座は譲らず。9番人気の伏兵は、3連単139万円決着の立役者となった。
「エムオーシャトルについて鹿戸師は『他馬のプレッシャーを受けるとやめる』と、精神面に課題があることを指摘していました。
ただ、今回は各馬が外差し有利の傾向を意識するあまり、直線まで寄ってきませんでした。気持ちよく2番手の好位を走れたのが勝因でしょうか」(競馬誌ライター)
木幡初騎手にとっては、約2ヶ月ぶりの今年3勝目。加えて、特別戦勝利は約4年ぶりだ。今回のレースは同騎手にとって、思い出に残るレースになるかもしれない。
一方のエムオーシャトルにとっても、今回の勝利は格別かもしれない。なぜならホッカイドウ競馬時代の恩師に捧げる「弔い合戦」だったからだ。
同馬は現在JRAに所属しているが、デビュー当時はホッカイドウ競馬の林和弘厩舎に在籍していた。
林師は通算1033勝、重賞42勝を誇るホッカイドウ競馬を代表する名伯楽として知られている。代表馬には昨年のJBC2歳優駿(G3)を制した今年のホッカイドウ競馬三冠馬ラッキードリームなどがいる。
しかし、レース前日の4日に林師は病気のため57歳の若さでこの世を去ってしまった。
「林先生はデビュー当時から『能検(新馬に課せられる模擬レース)はタイム・内容ともに素質を示す走り。実戦での走りが楽しみ』と、期待を膨らませていました。
ですが、ソラを使う癖があって、ホッカイドウ競馬時代は抜きん出た成績は残していませんでした。
今回もソラを使ってしまうのではと危惧していましたが、最後まで頑張ってくれました」(同ライター)
その証拠に木幡初騎手はレース後に「今日は抜け出してからも一生懸命に走ってくれました」と、コメントしている。
エムオーシャトルが見せた成長は、天国へ旅立った恩師にも届いただろうか。
(文=寺沢アリマ)
<著者プロフィール>
大手スポーツ新聞社勤務を経て、編集部所属のライターへ。サラ系・ばん馬のどちらも嗜む二刀流で「競馬界の大谷翔平」を目指すも収支はマイナス。好きな競走馬はホクショウマサル。目指すは馬券的中31連勝だが、自己ベストは6連勝と道は険しい…。
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