
「福永さん、反則ですよ」新王者ピクシーナイトが見せたタイキシャトル伝説の再臨! “グランアレグリア級”圧勝劇に福永祐一「想像を超えた馬になる」
「岡部さん、反則ですよ。こんな強い馬に乗ってたなんて……」
歴史に残る世代交代を遂げた1997年のマイルCS(G1)。3歳の短距離馬にとって、初めて古馬と戦うG1で、2馬身半差の圧勝を飾った主役タイキシャトルの横山典弘騎手は、大先輩で主戦の岡部幸雄騎手に向かって、思わずそう文句を言ったという。
それくらい、この3歳馬の能力は、すでに他の追随を許さない領域にあった。
これには藤沢和雄調教師たっての依頼という形で、乗り難しいシンコウキングの手綱を託されていた岡部騎手も「何言ってんだ。もし最初からお前が乗ってたら、こんなに強くなってないよ」と冗談半分で応戦する一幕があったという。
この後、再び主戦の岡部騎手に戻ったタイキシャトルは、当時12月だったスプリンターズS(G1)も連勝。最優秀短距離馬に選出されると、翌年の安田記念(G1)も楽勝し、ついにはフランスのジャックルマロワ賞(G1)で歴史にその名を刻んだ。
「ちょっと想像を超えた馬になる可能性が出てきました――」
平成最強の短距離馬タイキシャトルの世代交代劇から24年。3日に中山競馬場で行われたスプリンターズS(G1)を、3歳馬のピクシーナイト(牡3歳、栗東・音無秀孝厩舎)と福永祐一騎手が勝利。2007年のアストンマーチャン以来14年ぶりとなる世代交代を高らかに告げた。
ただし、アストンマーチャンは斤量53kgの3歳牝馬。55kgを背負う3歳牡馬となると、タイキシャトルを破って世代交代を告げたマイネルラヴ以来23年ぶりとなる。つまりはタイキシャトルが3歳でスプリンターズSを制した翌年まで遡るということだ。
着差は2馬身、しかしこれはスプリンターズSでは「圧勝」の部類に入る。実際に過去10年のレースを振り返っても、2馬身は昨年のグランアレグリアと同じ最大着差。それどころか、他には1馬身超える着差を付けた優勝馬すらいない。
ちなみにタイキシャトルでさえ、2着とは1馬身3/4差だった。これだけを見ても、如何にピクシーナイトが抜けたパフォーマンスを発揮したのかが窺える。
「レース後、福永騎手が『ここまでいいポジションで行けるとは正直驚いた』と振り返った通り、展開に恵まれた面はあります。ただ、『G1を勝てる馬にしたいという思いはありましたけど、こんなにG1の舞台でああいう横綱相撲の競馬をできるとは』と話している通り、以前から本格化するのは来年以降と言われ続けてきた馬。それだけに、今日の完勝は末恐ろしいものがあります」(競馬記者)
また、この結果には元JRAの安藤勝己氏も「恐らく陣営すら想像以上のスピードで進化しとるんやと思う。来年に天下取る馬って見立てをいい意味で裏切られた」とツイートするなど、この日のピクシーナイトの走りには、さすがのJRA1111勝ジョッキーも度肝を抜かれた様子だった。
「前々から『すごい馬になる』とは公言していたんですが、ちょっと想像を超えた馬になる可能性が出てきました。国内のみならず、いろんな選択肢が考えられる馬だと思います」
レース後、主戦の福永騎手の「海外」を見据えたコメントは、やはりあの時のタイキシャトルを彷彿とさせる。
「福永さん、反則ですよ。こんな強い馬に乗ってたなんて……」
スプリント界を制圧した若き王者はこれから、我々競馬ファンにどんな夢を見せてくれるのか。これだけ途方もない可能性を示し、次走が待ち遠しい馬は久しく現れてなかったかもしれない。
(文=浅井宗次郎)
<著者プロフィール>
オペックホースが日本ダービーを勝った1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)
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