JRA天皇賞・秋(G1)「鞍上問題」二転三転ワールドプレミア陣営の迷走、武豊と事実上「絶縁」は令和のアドマイヤとなるか
31日、東京競馬場で行われる今年の天皇賞・秋(G1)は、豪華メンバーの激突で非常に楽しみな一戦となりそうだ。
昨年の無敗三冠馬コントレイル、G1・5勝のグランアレグリア、今年の皐月賞(G1)を圧勝したエフフォーリアが出走。そのほかにも、G1で堅実に好走を見せるカレンブーケドール、7歳でも衰えを見せない古豪ペルシアンナイトなど、骨っぽい顔触れが揃った。
各馬の陣営が決戦に向け順調さをアピールする中、迷走が続いたのがワールドプレミア(牡5、栗東・友道康夫厩舎)である。今年の天皇賞・春(G1)を制した同馬にとって、ここは天皇賞春秋制覇の懸かる舞台。それだけに、勝負度合いは強そうに感じられるが、友道師のトーンは上がらない。
戦前の意気込みについて、休み明けとしてはこれまでで一番とは評しつつも、「ジャパンC(G1)、有馬記念(G1)がベストの距離」、「春の疲れが残った」と弱気なコメントも出ている。
指揮官の見立てとしては、何とか間に合ったというニュアンスが強い。実際、1週前の追い切りでも僚馬のユーキャンスマイル、ブラヴァスらとの3頭併せで4馬身遅れたように、状態面には不安が残った。
さらに問題視されるのはワールドプレミアの鞍上問題だ。主戦だった武豊騎手の骨折により、日経賞(G2)では石橋脩騎手にスイッチ。本番の天皇賞・春には武豊騎手の復帰が間に合ったため、一時的な乗り替わりと考えられていたものの、福永祐一騎手とのコンビが発表されるという意外な結末が待っていた。
結果的に福永騎手で勝利となったものの、陣営と武豊騎手との間に不穏なムードを察したファンも少なくなかっただろう。ただ、当時は主戦騎手が負傷明けということもあり、万全の態勢でレースに臨みたかったのではないかという見方もあった。
しかし、この「疑惑」が確信に変わったのが、秋の天皇賞想定で岩田康誠騎手の名前が挙がったことだ。これにより、春の降板劇が一時的なものではなく、ワールドプレミア陣営と武豊騎手の間に何かしらの溝があるのでは?という噂が、いよいよ現実味を帯びてきた。
ところが、それから間もなくして再び妙なことが起こる。岩田康騎手の想定から一転して、ワールドプレミアの騎手が「未定」へと変わっていたのである。春の天皇賞で騎乗した福永騎手はコントレイルとのコンビが決定的。これには武豊騎手の再登板かと、一部のファンがざわついたのも当然のこと。
だが、結局は岩田康騎手で最終追い切りが行われたため、本番でも同騎手の騎乗はほぼ間違いない。これで武豊復活説は完全になくなった。
「憶測の域を出ませんが、未定になったのはワールドプレミアの状態面に問題があったからかもしれません。オーナーの手前もあってメディアでは前向きなコメントが採り上げられがちですが、調教師がここまで“叩き台”的なニュアンスで語った以上、あまり期待は出来なさそうです。
懸念していたより状態が上向いたので、回避するよりとりあえず使う方向で落ち着いたのでしょう。良化もスローなようですから、友道師の言う通り、よくなるのはジャパンCか有馬記念ということですかね」(競馬記者)
そこで改めて気になるのは、ワールドプレミア陣営と武豊騎手との関係だ。同馬のオーナーは大塚亮一氏。1990年の有馬記念でオグリキャップのラストランに感動したのが、競馬に興味を持ったきっかけといわれている。このときオグリに騎乗していた武豊騎手に憧れ、自身も騎手を目指すも不合格。その後、オーナーとなって競馬界と関わりを持つことになった人物である。
憧れの存在だった武豊騎手を背にワールドプレミアで2年前の菊花賞を勝利したことは、オーナー冥利に尽きるだろう。そんな背景があるにもかかわらず、まるで手のひらを返したような一連の対応は、やはり両者の間に何かしらの確執があったと邪推せざるを得ない。
大塚氏が指南役と噂された関係者による持続化給付金の不正受給疑惑と騎手会長である武豊騎手。この問題が過熱したのがタイミング的に春の天皇賞前だったことを考えると、無関係とはいえなさそうだ。
武豊騎手といえば、過去には故・近藤利一さんと10年以上に及ぶ「確執」もあった。遺言ともいえるアドマイヤビルゴを任された経緯の和解はあまりにも有名だ。場合によっては今回の大塚氏も“令和のアドマイヤ”的な存在となるかもしれない。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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