JRAアルテミスS(G3)「人気の盲点」福永期待のシゲルイワイザケが3着激走! 「ぼくが乗って勝って重賞にチャレンジする馬は、期待していると思って大丈夫です」
出世レースと名高いアルテミスS(G3)が30日、東京競馬場1600mで行われた。2歳牝馬限定戦で、12月に行われる阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)の前哨戦に位置付けられている。
2012年に新設されたレースで歴史は浅いが、注目すべきは後に名牝と呼ばれるようになる馬を何頭も輩出していることだ。
リスグラシュー、ラッキーライラックが本レースの優勝馬である他、昨年はソダシが優勝。この時は9着に敗れていたユーバーレーベンも、今年のオークス(G1)でG1初制覇を果たした。
今年のアルテミスSはC.ルメール騎手のフォラブリューテが1番人気に推されるも、フタを開けてみれば7人気、2人気、8人気での決着。
そして、三連単約16万円の波乱演出に一役買ったのが、福永祐一騎手で3着に食い込んだ8番人気シゲルイワイザケ(牝2、栗東・渡辺薫彦厩舎)だ。
前週行われた菊花賞(G1)でも牝馬のディヴァインラヴを3着に導き、9・10月だけで重賞4勝と好調が目立つ福永騎手。
秋華賞(G1)では、デビュー当初からコンビを組んでいるアンドヴァラナウトに騎乗して3着入着したが、実は2着馬ファインルージュの騎乗依頼も来ていたという。アンドヴァラナウトを選んだ理由として、「どちらも高いレベルの馬ですが、デビュー戦から乗っている思い入れをお伝えして、受け入れていただきました」とコメントしている。
福永騎手がいかにデビュー戦からの縁を大切にしているかがわかる、印象的な一言である。若駒から古馬へと成長していく、その過程を共にするからこそ福永騎手の馬は大舞台で最高のパフォーマンスを見せることができるのかもしれない。
話をアルテミスSに戻すが、今回の出走馬11頭のうち福永騎手が騎乗経験のある馬はシゲルイワイザケ以外にも1頭いた。8月の新馬戦で騎乗したミントだ。後続に3馬身以上の差をつける快勝から本レースへの直行となり、陣営としては福永騎手に継続騎乗してほしかったと推測できる。
翻って、シゲルイワイザケは新馬戦こそ快勝したものの、続くサフラン賞(1勝クラス)では3着。いくら新馬戦から乗っている福永騎手の継続騎乗と言っても、いきなり重賞に出走したところで人気が出ないのは無理なからぬところであった。
まだ経験が3戦しかないが、シゲルイワイザケはスタートがかなり上手い。毎回「超好スタート!」と言いたくなる飛び出しぶりである。そうなると勢いそのままに逃げたくなってしまうところだが、福永騎手は必ず控えさせて、逃げはせずに好位でレースを運んでいる。
これには福永騎手ならではの競馬哲学と言えるかもしれない。YouTubeや専門誌のインタビューなどでは、度々逃げた馬のその後の悪影響について語っている。「次また同じように逃げるか、距離短くするしかないねんな」「走る馬であれば、絶対に下げたほうがいい」という言葉からは、例え逃げてその一戦は勝てたとしても、その後には繋がらないという信念が伝わってくる。
シゲルイワイザケは今回G3で3着と好走したことで、次走も12月に開催される阪神ジュベナイルフィリーズなど、G1含めた重賞チャレンジが想定される。次走発表を楽しみに待ちたい。
「ぼくが乗って勝って、つぎに重賞にチャレンジする馬は、期待していると思っていただいて大丈夫です」と競馬専門誌のインタビューで語った福永騎手。もし次走もシゲルイワイザケと福永騎手のコンビが見られるようなら、これは是非とも馬券を買って勝利の“祝い酒”をあげたいところだ。
(文=鹿取文)
<著者プロフィール>
平日は会社員、土日はグリーンチャンネル三昧の日々を送る。幼少期にグラスワンダーが勝った宝塚記念を生観戦、絶叫する親族にドン引きするも二十年経ち気づけば自分も同じ道へ。逃げ馬の粘りこみが好き。
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