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JRA天皇賞・秋(G1)横山武史「武豊の歴史を超えて欲しい」、父の願い叶えた!? 噂から現実に近づいた親子三代制覇

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エフフォーリア 撮影:Ruriko.I

 10月31日、東京競馬場で開催された天皇賞・秋(G1)は、横山武史騎手の3番人気エフフォーリア(牡3、美浦・鹿戸雄一厩舎)が優勝した。

 同馬はこれで皐月賞(G1)以来となるG1・2勝目。また、鞍上の横山武騎手は、先週の菊花賞(G1)に続き、2週連続のG1制覇を成し遂げた。

 改めて“記録づくし”の大一番だった。

 3歳馬が古馬を破って勝利を挙げたのは、2002年シンボリクリスエス以来となる19年ぶりの偉業。横山一家としても祖父の富雄さん、父の典弘騎手と史上初の親子3代での天皇賞・秋制覇となった。

 2着にも1番人気コントレイル、3着にグランアレグリア、三強といわれた馬が3着以内を独占したのは、1着ウオッカ、2着ダイワスカーレット、3着ディープスカイで決着した2008年から13年ぶりのこと。

「ダービーのこともあったので、人生で初めてうれし泣きをしました」

 レース後のコメントからも、はち切れんばかりの喜びが伝わってくる。弱冠22歳の若武者は、何度もガッツポーズを繰り返した。やはり真っ先に思い浮かんだのは、無冠の二冠を狙った前走・日本ダービー(G1)の敗戦だったのだろう。

 “展開のアヤ” ともいえそうなハナ差負けを喫したとはいえ、エフフォーリアが世代トップクラスの馬だという自負は陣営にあったはず。

 だが、意外にも陣営が選択したのは、菊花賞(G1)との二冠ではなく、あえて古馬が相手となる天皇賞の舞台。回避した菊花賞を皐月賞で負かしたタイトルホルダーが圧勝しただけに、一部のファンからは賛否を問う声も出た。

 ただ、裏を返せば勝ち負けになるという手応えなくして、この挑戦はあり得なかったのかもしれない。そして、見事にその期待に応えてみせた人馬のストーリーに、多くの競馬ファンは酔いしれた。

 三強対決に沸いた府中の芝2000m戦。16頭立てのレースで1番人気のコントレイルが1枠1番、2番人気グランアレグリアが5枠9番、エフフォーリアは3枠5番とそれぞれが悪くない枠を引き当てた。

 三強それぞれが無難なスタートを決める中、果敢にハナを奪ったのは横山典弘騎手のカイザーミノル。逃げた馬がスローに落とそうとしているのを察してか、C.ルメール騎手はグランアレグリアを2番手につける奇策を取る。隊列的にはこれを見る形で6番手にエフフォーリア、さらにその一列後ろにコントレイルの並びでレースが進んだ。

 各馬の動きが激しくなった最終コーナーに差し掛かり、最初に動いたのはグランアレグリア。残り400mを過ぎて早々と先頭に立ち、先にセーフティーリードを取ろうとしたルメール騎手の作戦だろう。

 だが、「そうはさせじ」とほぼ同じタイミングで追い出したのが、横山武騎手のエフフォーリア。外に進路を確保したコントレイルは、これを見てから追撃を始める。ここから3頭によるデッドヒートが展開されたが、残り100mで脚色の鈍ったグランレグリアが脱落する。

 次に、漁夫の利を狙う形となったコントレイルが懸命に追い上げたものの、グランアレグリアを交わすのが精一杯。まだまだ脚色に余裕のあったエフフォーリアとの差は詰まることなく、ゴールでは1馬身の差がついていた。

「とても若手とは思えない横山武騎手の冷静な判断が冴えました。この大一番でとんでもない度胸の持ち主ですよ。ライバルの手綱を取っていたのが、日本を代表するトップジョッキー2人というのも驚きです。

ダービーの敗戦を考えると心理的にはワンテンポ仕掛けを待ちたいところです。グランアレグリアがいい目標になりましたが、一歩間違えればコントレイルの末脚の餌食になるポジション。追い出しは早過ぎもせず、遅過ぎもせずの絶妙なタイミングでした」(競馬記者)

 まさに前門の虎、後門の狼となったライバルを相手に一部の隙も無い会心の騎乗。これを大きなプレッシャーの懸かった舞台で平然とできてしまうのが、父・典弘騎手から受け継いだ血のなせる業なのだろうか。

 そして、今年の天皇賞の結果は、今後の競馬界の激変を予感させるのに十分過ぎるインパクトも残した。

 なにしろエフフォーリアが負かした相手は、前年に無敗の三冠を達成したコントレイルなのだ。陣営がベストと公言する2000mの舞台で辛勝ではなく「1馬身」という明確な着差をつける完勝。横山武騎手自身、皐月賞、菊花賞に続いて秋の盾を制して今年のG1で3勝を挙げた。

 レジェンドといわれる武豊騎手が全盛期の勢いを失いつつある今、リーディングにはルメール騎手が君臨。これを福永騎手、川田将雅騎手らが追う構図が近年の傾向となっているが、もしかしたら横山武騎手が一気に勢力図を塗り替えてしまいそうな雰囲気もある。

 すべてが順調に行き過ぎたかに思えたダービーで、煮え湯を飲まされた相手の福永騎手がコントレイルと背水の覚悟で挑んだ決戦。絶対に負けられない意地と意地がぶつかった舞台で因縁の相手にリベンジを達成してみせた。

 「武史」という名前の由来が「武豊騎手の歴史を超えられるように」と願いを込めてつけられたという噂もあった。

 こちらについては、『netkeiba.com』コラム内の対談で典弘騎手が「そんなわけねーだろ(笑)」と“ネタばらし”する一幕も……。

 エフフォーリア&横山武騎手のコンビによる天皇賞制覇は、そんな噂も現実にしてしまいそうなニューヒーロー誕生を予感させるものだったといえそうだ。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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