JRA 武豊で必勝体制「あのクセ馬」は1番人気でまたも敗戦……“ドン詰まり”で乗り替わり、「前任ジョッキー」が見せた意地の好騎乗
20日、東京10Rに行われた秋色S(3勝クラス)は、3番人気のゴールデンシロップが豪快に差し切って優勝。JRAで走っている唯一のハヴァナゴールド産駒が、1勝クラスからの3連勝で見事にオープン入りを決めた。
その一方で、またしても1番人気に応えられず3着に敗退したのが、武豊騎手との新コンビで挑んだランドオブリバティ(牡3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)だ。
同馬は前走、M.デムーロ騎手とのコンビで紅葉S(3勝クラス)に出走。その前の糸魚川特別(2勝クラス)を完勝していたため、当日は単勝1.9倍のダントツの1番人気に支持されたが、直線で進路を無くす“ドン詰まり”の状態となり7着に敗退……。レース後、デムーロ騎手は「残念です」と話し、数日後には早くも武豊騎手との新コンビで秋色Sに向かうことが発表されていた。
その前走と同じ、東京の芝1600mで行われた17頭立てのレース。スタートを決めたランドオブリバティと武豊騎手は、好位3番手のインからの競馬。前半1000m通過59秒フラットのややゆったりとした流れの中、はやる馬の気持ちを鞍上が上手くなだめながら最後の直線を迎えた。
ラスト400mで逃げるフォッサマグナの外に持ち出され、進路をしっかりと確保。前回と同じ轍は踏ますまいという、レジェンド武豊騎手の見事な立ち回りである。坂の中ほどで満を持して追い出され、ステッキも入れられたランドオブリバティだったが、先頭に立ったのもつかの間、外から1頭の馬が強襲してきた。
3番人気のゴールデンシロップだ。ロイヤルブルーの勝負服に身を包んだその鞍上はなんと、前走でランドオブリバティに跨っていたデムーロ騎手である。ランドオブリバティはかつての相棒デムーロ騎手に豪快に差されると、最後は福永祐一騎手のリッケンバッカーにも内をすくわれて3着に終わった。
「結果的には1番人気を裏切るかたちとなってしまいましたが、オッズが割れていたように上位人気の馬にそれほど実力差はなかったように思います。
ゴールデンシロップは出遅れを巻き返しての強い競馬。リッケンバッカーは今年のNHKマイルC(G1)の4着馬です。同レースで8着だったランドオブリバティは、今回は普通に力負けだったといえるかもしれません」(競馬誌ライター)
昨年のホープフルS(G1)では最終コーナーで逸走するなど、クセ馬として知られている同馬。気難しい馬を御すことに定評のある武豊騎手を迎えて必勝体制を敷いたが、今回も勝利には一歩届かなかった。
ただ、今回のレースは同馬の前任ジョッキーだったデムーロ騎手の好騎乗を褒めるべきかもしれない。
スタートで2馬身ほど出遅れたデムーロ騎手とゴールデンシロップは、すぐに馬群に取り付いて上手くリカバリー。中団のインで3馬身ほど前にランドオブリバティを射程圏内に入れながら4コーナーを回った。
直線に入ってからの捌きも見事だ。馬群の真っ只中にいた人馬は、ロスなくスムーズに外に持ち出すことに成功。前走でドン詰まりを決められていたランドオブリバティ陣営にしてみれば、「なぜそれをウチの馬でしてくれなかったのか」と思わず唸らずにはいられないほどの巧みさである。デムーロ騎手にしてみれば、紅葉Sでの失敗を糧にしたのかもしれない。
またデムーロ騎手はランドオブリバティで糸魚川特別を勝った際、「抜け出したらソラを使った」とコメントしているが、今回は同馬が抜け出しを図り、先頭に立ったところを外から強襲している。騎乗経験があるからこそ知る、同馬のウィークポイントを見事に突いた、まさにデムーロ騎手の意地の勝利だった。
今回の上位3頭は今後もマイル路線で活躍が期待される3歳馬。上のクラスで再び相まみえるのを楽しみに待ちたいところである。
(文=冨樫某)
<著者プロフィール>
キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。
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