JRA「永遠のライバル」が来年度「種付け料」で明暗!? 800万大幅増エピファネイアに対し、キズナ僅か200万増……。その陰に「アノ馬」の存在?
社台スタリオンステーション(SS)が2022年度の主要種牡馬の種付け料を24日、公式ホームページで発表した。
今年度単独トップだったロードカナロアは1500万円で据え置き。代わりに1000万円から1800万円へ大幅アップを果たしたエピファネイアがトップに躍り出た。
躍進の立役者はエフフォーリアだろう。昨年無敗の牝馬三冠に輝いたデアリングタクトに続き、皐月賞(G1)でクラシック制覇を飾ると、天皇賞・秋(G1)で並み居る強豪古馬を退けた。10年にわたって種牡馬リーディングトップに君臨したディープインパクトが天国に旅立った今、国内ナンバーワン種牡馬としての地位を固めようとしている。
そのエピファネイアとロードカナロアに続く3番手は1000万円から1200万円にアップしたキズナである。エピファネイアとは同じ2010年生まれで、現役時代から2頭はライバル関係にあった。
両馬は2歳から4歳時にかけて、日本ダービー(G1)など通算4度対戦し、2勝2敗の五分。引退後はともに16年から供用を開始し、種牡馬としてもしのぎを削ってきた。
両馬の種付け料推移にもそれが現れている。
【年度別種付け料推移(16年~22年度)】
<エピファネイア>
250万→250万→250万→250万→500万→1000万→1800万
<キズナ>
250万→250万→350万→350万→600万→1000万→1200万
上記のように、2頭は仲良く250万円からスタート。3年目にキズナが350万円で一歩リードすると、産駒のデビュー後はトントン拍子で6年目の今年度に揃って1000万円の大台に到達した。
エピファネイア産駒は先述した“怪物”2頭に加えアリストテレスとサークルオブライフの計4頭が重賞を計8勝しているが、うち5勝がG1という勝負強さを誇る。しかし、アベレージは高いわけではなく、未勝利で終わる産駒も少なくない。野球で例えるなら一発長打はあるが、三振も多い4番打者タイプといえるだろう。
一方、キズナはG1馬こそ先日のエリザベス女王杯(G1)を制したアカイイトだけだが、10頭が重賞を計15勝している。一発こそ少ないが、安打を量産し、高打率をマークする3番打者といったところか。
ちなみに先週末までの1頭あたりの平均獲得賞金額を比べると、エピファネイアは1097万円、キズナは1374万円である。生産者目線で考えれば、キズナの方がリスクは低いとみていいだろう。
さらに、初年度から多くのノーザンファーム有力繁殖牝馬に種付けしてきたエピファネイアに対して、キズナの交配相手は日高の零細牧場の繁殖牝馬も多く、エピファネイアほど恵まれていたわけではない。
それでも今年度の1000万円横並びから来年度は一気に600万円の差がついたことには幾つかの要因がある。
1つ目は、サンデーサイレンスの血の濃さだろう。キズナは父がディープインパクトなので、産駒にとってサンデーサイレンスは3代前となる。つまりサンデーサイレンスのクロスを作ろうとすると、どうしても「3×3」という強いものがメインになってしまう。
一方、エピファネイアは母がシーザリオ、その父がスペシャルウィークなので、産駒にとってサンデーサイレンスは4代前。つまり、奇跡の血量と呼ばれる「4×3」のクロスを非常に作りやすい。サンデーサイレンスの血を持つ有力繁殖牝馬との交配のしやすさという点では、エピファネイアに分があるのは間違いないだろう。
2頭の明暗を分けたもう1つの理由が、コントレイルの存在だ。
昨年の三冠馬で菊花賞(G1)後は勝利がないため、やや評価を落としているが、種牡馬としての期待値は変わらず高い。同じディープインパクト後継候補としてキズナにとっても大きなライバルとなるだろう。
そのコントレイルだが、来年度から社台SSでの種牡馬入りが決まっている。種付け料はまだ発表されていないが、今週末に行われるジャパンC(G1)のパフォーマンス次第で決定となりそうだ。
群雄割拠の時代に突入したと思われた国内の種牡馬争い。種付け料だけを見ればエピファネイアが一歩リードした形だが、ここからキズナの“追い込み”は見られるか。同世代2頭の今後にも要注目だ。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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