JRA ジャパンC(G1)コントレイル「全部勝つ」から「名誉を守る」へトーンダウン? ラストランでの窮地脱出にかつてない悲壮感
28日、東京競馬場でジャパンC(G1)が行われる。日本初の国際招待競走として1981年に誕生したレースが、今年で41回目を迎える。
注目は昨年無敗の三冠に輝いたコントレイル(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)だ。父ディープインパクト以来、史上3頭目の快挙を成し遂げた馬が、このレースを最後に現役から退き、一昨年亡くなった父の後継種牡馬となる。
陣営が不安視する長距離戦やコースを意図的に避けたのは、取りこぼしのリスクを冒さないことで種牡馬としての価値を高める思惑もあったのだろう。過去の三冠馬が「王道」としてきた有馬記念(G1)や天皇賞・春(G1)などへの出走はせず、コントレイルの「得意条件」を中心にローテーションが組まれた。
また引退を発表した際、父のラストランの有馬記念の回避(G1)について矢作師がは「(コントレイルの)得意な条件と思えないし、そういうレースには出したくない」と、コメント。していたことも、今秋のコントレイルはが勝算の勝てる確率が極めて高いG1だけに的を絞ったことが見て取れる。
6月に予定していた宝塚記念(G1)は、大阪杯の疲労が取れず万全の状態で出走できないことを理由に5月末に回避を表明。併せて万全な状態で天皇賞・秋(G1)へ参戦した。
だが、結果は3歳馬のエフフォーリアに1馬身という決定的な差をつけられての2着。背水の陣で挑んだ前年の無敗三冠馬が年下の皐月賞馬に完敗した時点でコントレイルのプライドは地に落ちたと言っても過言ではないかもしれない。
今春までコントレイルは今の日本競馬界を引っ張っていく存在、そして何よりも「ディープインパクト超え」が期待されていた。矢作師は年初の『中日スポーツ』の取材で「2021年は負けないでいきたい。おそらく前哨戦は使わずに、全部G1レースになると思う。あと三つは勝ちたい。ディープインパクトの真の後継種牡馬になるために」と、決意表明しており、コントレイルのパフォーマンス次第では、父が敗れた凱旋門賞挑戦のプランもあったほどだ。
しかし、最終的に海外挑戦のプランは立ち消えてしまった。これは、コントレイルが陣営の期待していたような走りを見せられなかったというシビアな現実を意味することとなる。
今思えば、無敗で挑んだ昨年のジャパンCで、女王アーモンドアイに敗れたときから既に暗雲が漂っていたといえるだろう。この敗戦からズルズルと3連敗した現在の姿にデビューから7連勝した無敵の三冠馬の面影はもはやない。
仕切り直しとなった春の大阪杯(G1)で「今年は出るレースを全部勝つという意気込みで臨みたい」と、高い目標を掲げていた主戦の福永祐一騎手ですら、今では「三冠馬としての名誉を守るためにも、勝って締めくくりたい」とトーンダウン。目標が「1年を通して全勝」から「目先の1勝」へ“下方修正”していると思われても不思議ではない言葉である。
「ディープインパクトの真の後継種牡馬になる』を目標にしてきた2021年。父の再現が出来たのは、「無敗の三冠達成」と「引退年齢」だけのように思えるコントレイル。矢作師は「自分の想像を常に超越してきた馬」と、表現しているが、「無敗の三冠馬」という肩書を背負っている馬としては物足りない印象も拭えない。
果たして、第41回ジャパンCで見られるのは三冠馬のプライドか。それとも、負けてターフを去る三冠馬の悲しき背中か。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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