JRA年内引退報道「一斉削除」にファンも混乱!? ジャパンC(G1)で「キセキの復活」はあるか?
28日、東京競馬場では第41回ジャパンC(G1)が行われる。今年は海外から来日した3頭を含め、9頭のG1馬がそろう楽しみな一戦となった。
そのうちの1頭が2017年の菊花賞馬キセキ(牡7歳、栗東・辻野泰之厩舎)だ。
実は菊花賞(G1)を最後に4年以上勝利から遠ざかっているが、時には大逃げ、時には後方からの豪快なマクりなど破天荒なレースぶりでファンを魅了してきた。
菊花賞以降も、G1・2着は4回を数えるなど、中長距離路線で活躍。今年に入ってからも前走の京都大賞典(G2)で3着など国内外の4戦すべてで掲示板確保と存在感を示している。
そんなキセキの「年内引退」が報じられたのは先月21日のことだった。スポーツ新聞各紙は「年内に引退し、種牡馬入り」と一斉に速報。ファンも即座に反応し、人気馬の引退を惜しむ声がTwitterなどで多数上がった。
当時、報じられた内容は「アルゼンチン共和国杯(G2)を視野に、ジャパンC、香港ヴァーズ、有馬記念といったG1レースのいずれかを使って引退」という具体的なもので、辻野師のコメントも引退を示唆する内容だった。しかし、当日中に当該記事は一斉に削除されると、「飛ばし記事だったのか?」とちょっとした騒動になった。
翌22日にはキセキの生産者でもある下河辺牧場が公式Twitterに「僕らもネットで知ったのですが、オーナーから連絡がありましてどうやら正式発表したものではないようです」と投稿。「ただ、いつかは引退する日は来るのでその時まで変わらず応援していただけたらなと思います」とファンに呼びかけた。
「各社が一斉に報じたことから引退は既定路線だったのだと思います。ただ陣営の間で意思疎通がうまくとれていなかったのかもしれませんね。
オーナーとしては京都大賞典でのキセキの走り、そして同レースを勝った8歳馬マカヒキの激走を見て心変わりしたのかもしれません」(競馬誌ライター)
実はキセキの“引退撤回”騒動は昨年末にもあった。当時のトレーナーだった角居勝彦氏が有馬記念前に『NEWSポストセブン』のインタビュー記事で「オーナーからは私と一緒に引退、と聞いているのでここが最後のレースになるかもしれません」と引退をほのめかし、「なお引退後は種牡馬になることも決まっています」と具体的なプランまで明かしていた。
ただ、キセキが有馬記念で出遅れて12着に惨敗すると、年明けには角居氏が「オーナーと相談して、もう1年という話になりました」と現役続行を宣言した。
これには「てっきり有馬記念で引退だと思って応援馬券買ったんだが……」など肩透かしを食らったファンも少なからずいたようだ。
遅かれ早かれキセキが引退する日は来る。しかし、休み明けであわやのシーンを演出した前走からの上積み次第では今回もチャンスは十分ありそうだ。
特にジャパンCは過去2回走って、どちらも見せ場を作っているレース。3年前はマイペースで逃げてアーモンドアイのレコード勝ちをアシスト。自身も2着に入っている。
昨年は1000m通過が57秒9という超ハイラップを刻むと、直線はさすがに失速し、8着に敗れたとはいえ、アーモンドアイら三冠馬3頭による世紀の対決を大きく盛り上げた。
今年は前走で初タッグを組んだ和田竜二騎手が継続騎乗する。ここ2走は出遅れ癖も出ておらず、正攻法の好位で競馬をしているものの、前走後には和田騎手から「スタミナ勝負に持ち込むことが課題」という発言も出ており、枠とスタート次第では今年も大逃げを打つシーンがあるかもしれない。
24日の最終追い切りは栗東CWで5ハロン70秒7-12秒4の好時計をマークした。その動きからもひと叩きされての良化は間違いないだろう。2着はもう要らない。ファンが望むのはキセキの復活Vだけだ。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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