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JRA武豊の意地と河内洋の夢がぶつかりあった7センチ差、「最弱世代」のレッテル貼られるも…エアシャカールの「三冠阻止」したアグネスフライト逝く

JRA武豊の意地と河内洋の夢がぶつかりあった7センチ差、「最弱世代」のレッテル貼られるも…エアシャカールの「三冠阻止」したアグネスフライト逝くの画像1
撮影:Ruriko.I

 2000年の日本ダービー(G1)を制し、現役引退後は北海道浦河町の日高スタリオンステーションにて種牡馬として供用されていたアグネスフライト。種牡馬引退後は北海道千歳市の社台ファーム等で繋養されていたが、11日に老衰のため26歳で死亡したとJRAから発表された。

 2023年の今年から遡ること23年前の日本ダービーが行われた5月28日。この日の東京競馬場は、河内洋騎手(現調教師)と武豊騎手によるゴール前での壮絶な叩き合いが繰り広げられ、わずか7センチ差の大接戦をモノにしたアグネスフライトと河内騎手のコンビが優勝した。

「河内の夢か?豊の意地か?」

 ライバル2頭が最後の直線で並んだ際に生まれた三宅正治アナウンサー(フジテレビ)の名実況もファンの間で語り草となっている。

 また、惜敗した武豊騎手も珍しくガッツポーズをした兄弟子のダービー勝利を喜んだ。何しろ河内騎手は、ダービー初騎乗から17戦目での優勝。これは柴田政人騎手の19戦に次ぐ史上2位の騎乗回数であり、45歳3カ月7日での優勝は史上4位の年長記録だった。

 当時、ダイタクリーヴァを応援するために東京競馬場で観戦していた筆者だが、馬群に沈んでいく本命馬をよそにゴール前では「カワチ!カワチ!」と声を上げていた。勿論、武豊騎手も好きだが、こちらは既にスペシャルウィーク(1998年)、アドマイヤベガ(1999年)でダービージョッキーに仲間入りしていたこともあり、最後のチャンスを必死につかもうと踏ん張るベテランの姿に感動したことを覚えている。

 翌年の河内騎手は、アグネスフライトの1歳下の全弟アグネスタキオンとの出会いもあり、無敗で皐月賞(G1)を制したパートナーと2年連続でダービー優勝かという声も出たのだが、不運にも大一番を前に左前浅屈腱炎を発症していることが判明。河内騎手は日本ダービーでダンツフレームに騎乗したものの、ジャングルポケットの2着に敗れた。結果的にアグネスフライトで挑んだダービーが最大のチャンスだったのかもしれない。

 ダービーで白熱したバトルを見せた2頭は、秋初戦の神戸新聞杯(G2)で上がり馬フサイチソニックの前にアグネスフライトは2着、エアシャカールは3着と敗れたものの、菊花賞(G1)をエアシャカールが制して二冠を達成。ここまではスペシャルウィークとセイウンスカイの姿が重なる戦績だったが、それ以降は両馬とも精彩を欠いた。

 クラシックを分け合った2頭は、当時無敵を誇ったテイエムオペラオーにジャパンC(G1)で挑んだが、アグネスフライト13着、エアシャカール14着と揃って大敗。いずれも現役時代に挙げた最後の勝利がクラシックの一戦となり、強敵揃いだった前後の世代に挟まれて苦戦を続けた。

 その結果、不甲斐なさを揶揄した一部の競馬ファンから“最弱世代”というレッテルを貼られることも少なくなかった。もしダービーをエアシャカールが優勝していたなら、それこそ「史上最弱の三冠馬」という有り難くない扱いを受けていた可能性すらあるだろう。

 だとすれば、アグネスフライトがエアシャカールの三冠を阻止した意味は、“大きかった”のかもしれない。

 しかし、世代レベルという無粋な話を抜きにして、2000年の日本ダービーを映像で振り返った場合、間違いなくダービー史に残る好レースだったと断言できることも確か。

 人気アプリ『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)のキャラクターとしてエアシャカールは登場しているが、「アグネス」の冠名を持つキャラクターは、現在のところアグネスデジタルとアグネスタキオンのみ。近い将来、アグネスフライトが実装されることに期待したい。

黒井零

黒井零

1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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