JRA有馬記念で決着!どこよりも早く2021年JRA年度代表馬を検証。天皇賞・秋&有馬記念連勝のエフフォーリアと海外G1総なめ歴史的快挙ラヴズオンリーユーの一騎打ちか?
有馬記念(G1)はエフフォーリアの完勝で幕を閉じた。戦前は「天皇賞・秋には及ばない状態」と主戦の横山武史騎手は述べていたが、そんな不安を感じさせない見事な勝ちっぷり。
まさしく名実ともに現役最強馬としての立場を不動のものとしたが、来年はさらなるチャレンジが待っていそうだ。ドバイ遠征か、アメリカ遠征か、もしくは凱旋門賞(G1)か――。今年出走しなかったジャパンC(G1)も当然目標の一つにもなるだろうし、どれほどの高みにのぼってくれるか楽しみで一杯だ。
エフフォーリア陣営にとって気になるのはJRA年度代表馬の行方だろう。
年度代表馬は各JRA賞を受賞した馬の中から選ばれるが、エフフォーリアは日本ダービーでシャフリヤールに敗退したものの、皐月賞(G1)制覇に加え、天皇賞・秋(G1)と有馬記念勝利のインパクトは大きく最優秀3歳牡馬が濃厚だ。
そうなると次は年度代表馬ということになる。年度代表馬を含めたJRA賞の投票権を持つのは、中央競馬の記者クラブに通算3年以上加入するなど、JRAが定めた条件によって選ばれた競馬記者たち。昨年の投票者と投票先はJRAの公式サイトで閲覧が可能で、誰がどの馬に投票したかわかるようになっている。
2020年の年度代表馬はアーモンドアイが236票を集めたが、コントレイルも44票を集めた。一方で牝馬三冠のデアリングタクトにも1票入っており、なかなか興味深い。
その記者たちが2021年に活躍した馬から選ぶ年度代表馬。もし有馬記念をクロノジェネシスやタイトルホルダー、そしてアカイイトが勝利していれば、年度代表馬の行方は混沌としていただろう。しかしエフフォーリアの勝利で、それまで明確ではなかった年度代表馬の選出も決着したかに思える。今年国内でG1レースを3勝したのは同馬のみであり、有馬記念が終わった今、その勝利数を超えることは不可能だからだ。
しかし、そこに待ったをかけるであろう馬がいることを忘れてはならない。
それが今年、JRA調教馬で初めて海外G1を3勝したラヴズオンリーユーだ。同馬はクイーンエリザベス2世C(G1)、ブリーダーズCフィリー&メアターフ(G1)、香港C(G1)を同一年度で勝利という偉業を達成。特にブリーダーズCの勝利はJRA調教馬として初めてであり、競馬史に残る快挙である。
エフフォーリアは国内G1を3勝、ラヴズオンリーユーは海外G1を3勝と対照的な成績。これが年度代表馬の選考にどのように影響するのか、過去の事例を含めて検証してみたい。まず過去5年の年度代表馬と受賞した年の成績を見てみよう。
■過去5年のJRA年度代表馬と受賞年の成績
2020年 アーモンドアイ(ヴィクトリアマイル、天皇賞・秋、ジャパンC=G1 3勝)
2019年 リスグラシュー(宝塚記念、コックスプレート、有馬記念=G1 3勝)
2018年 アーモンドアイ(牝馬三冠、ジャパンC=G1 4勝)
2017年 キタサンブラック(大阪杯、天皇賞・春、天皇賞・秋、有馬記念=G1 4勝)
2016年 キタサンブラック(天皇賞・春、ジャパンC=G1 2勝)
この5年の成績を見ると、やはり国内の古馬G1レースで結果を出している馬が優勢だ。
2020年はコントレイルが無敗で三冠を制したが、直接対決のジャパンCで勝利したアーモンドアイが受賞。また2016年のキタサンブラックはG1を2勝で年度代表馬に選出されているが、同年のモーリスは香港のチャンピオンズマイル、香港C、そして日本の天皇賞(秋)とG1を3勝していながら受賞を逃し、特別賞の受賞にとどまっているのだ。
なおモーリスは2015年では年度代表馬に選出されている。その時は安田記念、マイルCS、香港マイルとG1を3勝しているが、国内でG1を2勝しているのが選出の決め手だったと思われる。やはり国内G1重視が各記者の判断基準の一つだろう。次に念のため今年の2歳戦を除く平地G1レースの勝ち馬を見てみよう。
■2021年JRA 平地G1と優勝馬(2歳戦を除く)
フェブラリーS カフェファラオ
高松宮記念 ダノンスマッシュ
大阪杯 レイパパレ
桜花賞 ソダシ
皐月賞 エフフォーリア
天皇賞・春 ワールドプレミア
NHKマイルC シュネルマイスター
ヴィクトリアマイル グランアレグリア
オークス ユーバーレーベン
日本ダービー シャフリヤール
安田記念 ダノンキングリー
宝塚記念 クロノジェネシス
スプリンターズS ピクシーナイト
秋華賞 アカイトリノムスメ
菊花賞 タイトルホルダー
天皇賞・秋 エフフォーリア
エリザベス女王杯 アカイイト
マイルCS グランアレグリア
ジャパンC コントレイル
チャンピオンズC テーオーケインズ
有馬記念 エフフォーリア
御覧の通り、G1レースを2勝しているのはグランアレグリアのみで、3勝はエフフォーリアのみという内容。この結果を踏まえれば、やはり天皇賞・秋と有馬記念という古馬の王道を含めた国内G1を3勝したエフフォーリアと、海外G1を3勝したラヴズオンリーユーでは、エフフォーリアが年度代表馬に選ばれる可能性が非常に高い。
そしてラヴズオンリーユーは最優秀4歳以上牝馬をクロノジェネシスと争い、場合によっては特別賞といった扱いになりそうだ。
2021年のJRAはコントレイル、グランアレグリア、ダノンスマッシュ、クロノジェネシス、ラヴズオンリーユー、クリソベリルなど、古馬の実力馬がこぞって引退。
一方でエフフォーリアやステラヴェローチェ、タイトルホルダー、シャフリヤール、シュネルマイスター、ピクシーナイト、グレナディアガーズ、ソダシといった力のある3歳馬が台頭し、見事に世代交代が完了した。
その中でエフフォーリアは頭一つ抜けた感もあるが、強力なライバルたちがいてこそ競馬はさらに盛り上がるもの。おそらく2021年のJRA年度代表馬はエフフォーリアが選ばれるであろうが、ライバルたちの奮起にも期待したい。
(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。
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