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JRA「馬券圏外」でもファンの心を動かした脅威の粘り腰、「ダブルパンチ」の逆境を跳ね返した人馬にありがとうの大合唱?

JRA「馬券圏外」に敗れてもファンの心を動かした脅威の粘り腰、「ダブルパンチ」の逆境を跳ね返した人馬にありがとうの大合唱?の画像1

 成人の日に中山競馬場で行われたフェアリーS(G3)は、5番人気のライラックが大外から一気に突き抜けて勝利。2着以下は内から抜け出たスターズオンアースと最後に外から脚を伸ばしたビジュノワールが入った。

 追い込み勢が上位を占めた先行勢に厳しい展開のなか、最後まで見せ場を作ったのが、2番手につける積極的な競馬で4着だった10番人気のフィールシンパシー(牝3歳、美浦・小島茂之厩舎)だ。

 本馬の初勝利は、フェアリーSと同コースの未勝利戦を番手から押し切ってのもの。レースセンスの高さやコース実績を買われて、戦前から穴党の間で密かに注目を集めていた。

 だが、そんな穴党や本馬の関係者らに「2つの悲劇」が起こる。

JRA「馬券圏外」に敗れてもファンの心を動かした脅威の粘り腰、「ダブルパンチ」の逆境を跳ね返した人馬にありがとうの大合唱?の画像2 1つはレースの2日前になって突如鞍上が替わったことだ。当初予定していたのは田辺裕信騎手だったものの、知人から新型コロナウイルスの陽性反応が検出。これを受けて、感染拡大予防のために騎乗を自粛。坂井瑠星騎手に変更となった。

 田辺騎手は過去5年における中山マイルで、C.ルメール騎手に次ぐ勝利数を誇る名人。同コースで行われた15年の京成杯AH(G3)を、13番人気フラアンジェリコで勝利に衝撃を受けたファンも多かっただろう。

 ただ急遽代打として起用された坂井騎手も、年を追うごとに成績を伸ばしている気鋭の若手騎手だが、関西の騎手であるため中山競馬場の騎乗経験が少ない。「トリッキー」と評される中山コースでは騎手の役割は他の競馬場より大きいとされるため、陣営にとっても今回の乗り替わりは、痛恨だったに違いない。

 そして、乗り替わり以上に“痛い”ニュースがフィールシンパシーに襲いかかる。それが、8枠16番の大外になってしまったことだ。

 中山マイルはスタートしてすぐ右に曲がるカーブがあるため、一般的に大外枠は不利とされている。特に先行馬はスタート直後に位置を上げる必要があるため、コーナーで外に振られて体力を多く消耗するリスクがある。

 よりによって当たってほしくない枠に入ることとなったフィールシンパシー。乗り替わりと大外のダブルパンチを食らってしまったわけだが、レースでは脅威の粘り腰を見せる。

 大外から五分のスタートを切ると、出脚の速さを生かして2番手を確保。4コーナーを手応えよく回って早めに逃げ馬を交わして単独の先頭に立った。最後は序盤で脚を使ったためか、後続馬に交わされたとはいえ、馬群に飲まれることなく僅差の4着に粘りこんだ。

「中山芝1600の16番から先行して大健闘だったと思います。先行勢が残りやすい開幕週ならまだしも、中山はまだ昨年の最終開催から2週間程度。決して良好な馬場といえないだけに、これだけの粘りを見せたのは、力のある証拠でしょう。

鞍上の坂井騎手は代打でしたが、フィールシンパシーのスタイルを貫く先行策を採ったのはファインプレーだと思います。思い切りの良さが光る騎乗でした」(競馬誌ライター)

 これにはファンも同意見で、ネットの掲示板やSNSでは「よく頑張った」「良いレースでした」「坂井くんありがとう」と、感謝や労いの声で溢れていた。

 馬券圏外となる4着なら、ファンから“恨み節”のコメントで埋まるのがよくある光景なのだが、今回ばかりは人馬が期待以上のレースをしてくれたからこそ、3着に入れなくてもいつもとファンの反応が違ったのかもしれない。

 そんな応援してくれるファンのためにも、次走こそ内枠の絶好枠に恵まれて、押し切ってくれることに期待したい。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……

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