JRA「言うことがないです」武豊も絶賛したアロゲート産駒から怪物登場の予感も……。 将来性豊かな期待馬を襲ったアクシデント
16日、中京競馬場で行われた4Rの3歳新馬(ダート1800m)は、松山弘平騎手の1番人気ウィングヘヴン(牝3歳、栗東・茶木太樹厩舎)が優勝した。直線で楽に抜け出すと、後続を見る見るうちに離していく6馬身差の圧勝で、1番人気の期待に応えた。
「まだ良くなっていきそうなので、これからが楽しみです」
これほどまでの圧勝にも関わらず、松山騎手の口から出たコメントは未来を見据えていた。10分後に中山競馬場で行われたダート1800mの新馬戦を圧勝したチャプリと並んで、これからのダート牝馬界を背負っていく。そんなスケールの大きさを感じさせるレースだった。
14頭立ての牝馬限定戦。ウィングヘヴンはまずまずのスタートから行き脚がつくと、好スタートを決めて逃げるスマートグランデをマークする形で追走する。その後は隊列が大きく変わることなく、淡々とレースが進み4コーナーへ。
直線入口で自身に次ぐ2番人気に並びかけて早々に蹴落し独走状態に持ち込むと、あとは突き放す一方。スタートも手前替えも上手に行った上での圧勝に『スポーツニッポン』の取材で茶木師は「強かったです。今日のところは言うことがないです」と、100点満点を与えていた。
同馬の父は近代の米国競馬において、最強馬との呼び声も高いアロゲートだ。2016年のBCクラシック(G1)で当時世界ランキング1位のカリフォルニアクロームとの接戦を制してトップの座を奪うと、その後も数々の大レースを優勝。また、19年にウィンクスに抜かれるまで、獲得賞金世界歴代1位だった。
アロゲート産駒といえば、武豊騎手に「半端ない」と、ベタ褒めされたジュタロウなど粒揃い。だが、本馬も着差だけでなくレース内容も優秀で、アロゲート産駒の評価を上げるのに一役買ったといえそうだ。
「走破時計も1分54秒4と、良馬場で行われた新馬戦にしては優秀な時計です。同日の同条件で行われた2Rの未勝利戦より3秒近く速かったですし、6Rの1勝クラスでも連対可能なタイムでした。
血統はゴリゴリの米国血統で、とにもかくにもダートが合うという印象です。毛色もお父さんを彷彿とさせる芦毛で、松山騎手のコメント通り今後伸びていきそうですよ」(競馬記者)
そんな将来性豊かな芦毛牝馬をアクシデントが襲ったのは18日。所有するキャロットファームから本馬が右前脚の第3手根骨を骨折したと発表したのである。
まるで疾病によりデビューが遅れ、早逝した父を連想させる早い時期での怪我に、ネット上のファンからは驚きとともに無念の言葉が多く発せられた。
「程度はまだ分からないので何とも言えませんが、これは痛いですね……。左右の違いはありますが、同クラブのグランデマーレも同じ箇所を骨折し、その後復帰しています。競走能力に影響無く、復帰できることを祈るばかりです」(同)
怪我で2戦目以降は白紙となってしまったが、まだ3歳1月の段階。治療に専念し、ゆくゆくは同クラブの先輩であるマルシュロレーヌに並ぶ偉大なダート牝馬になってくれることを願いたい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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