JRA 「打倒ノーザン」万年2位の社台ファームが新たな外厩導入!トレセンから「60キロ」も離れた土地に建設するワケ
ノーザンファーム一強時代に終止符を打つことになるだろうか。
日本有数の競走馬の生産・育成牧場として知られる社台ファームが、三重県鈴鹿市にトレーニング施設付きの放牧場、いわゆる外厩施設を建設することが分かった。仮称は「社台鈴鹿トレーニングセンター」。
建設予定地は元々同市にある鈴峰ゴルフ俱楽部の東コースで、同ファームがその土地を買い取り、新たに外厩を建設するという。今年の4月に着工し、来年6月から一部が稼働する見通しだ。
社台ファームは現在、宮城県亘理郡山元町にある山元トレセンと滋賀県甲賀市にあるグリーンウッドの計2場の外厩を所有している。予定通り設けられることになれば、3つ目の外厩となり、更なる社台ファーム生産馬の活躍が期待されることになるだろう。
外厩は今の日本競馬の根幹を支える重要な役割を担っている、と言っても過言ではない存在だ。競馬専門紙の厩舎コメントなどでよく見られる「短期放牧」は、基本的に外厩に入ることを指している。
外厩の中には東西トレセンより優れた調教施設を設置しているところも少なくなく、東西トレセン近郊の競走馬が過ごしやすい冷涼な土地にある。快適な環境で、キビキビとした調教が行えるため、多くの競走馬が利用している。
また外厩はトレセンの近くに建てられるため、東西トレセンがある茨城県や滋賀県に集中している。そのため、隣県とはいえ三重県に建設するということに驚いた方も多いかもしれない。これには様々な理由があるそうだ。
「三重県と聞くと、栗東トレセンから随分離れているような気がしますよね。ただ、建設予定地の鈴峰ゴルフ俱楽部は交通の便が良く、新名神高速道路を利用すれば、トレセンまで1時間程度になります。これでしたら栗東の調教師の方々も、頻繁に行き来して管理馬の様子をチェックできますし、馬への輸送の負担も少ないですよね。
また、建設場所をゴルフ場にしたことにも理由があります。2020年秋に滋賀県大津市にチャンピオンズファームという別の外厩が開場したのですが、ここは建設段階で地域住民の方々から猛反発され、裁判沙汰になったんですよ。
元々ゴルフ場だった土地を開発するのですから、周辺に住宅街などもありませんし、土地自体も広いです。過去を振り返った上で、最善の選択をしたように思えます」(競馬記者)
今回の建設を受け持つ株式会社イケダエステートが公表している事業計画書の中には、施設の用地の選定条件の1つに「周辺環境への影響が少ない場所」と、記載がある。また、同書では排水計画や環境保全計画についても記載されており、周辺環境に最大限配慮して建設・運営する見込みを表明している。
建設ニュースや入札情報を報じる『建通新聞』によると、建設予定地の取引は3年以上前の2018年11、12月頃に行われていたという。少なくとも数年前から建設の話は上がっていたのだろう。
2011年の生産者リーディング獲得を最後に、ここ10年もノーザンファームの2位に甘んじている社台ファーム。絶好の土地を手に入れ、トップクラスの育成施設を作る準備は整った。果たして数年後、社台ファームが再び1位の座に輝けるだろうか。逆襲に期待したい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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