
JRA 苦労人騎手「1年3か月ぶり」勝利を裏で支えた亡き馬の存在、「管理でき幸せです」若き新鋭トレーナーの愛馬を襲った悲劇とは
20日、阪神競馬場で行われた2Rの3歳未勝利戦は岡田祥嗣騎手の2番人気クレスケンスルーナが好位から抜け出て快勝。デビュー2戦目で嬉しい初勝利を手にした。
「砂を被らない良い位置を取れました。初戦もいい内容でしたし、距離にも対応できそう。これからが楽しみです」と振り返った岡田騎手は、これが2020年11月以来となる約1年3か月ぶりの白星。地方競馬では通算1900勝以上を誇る名手ながら、乗り鞍に恵まれなかったが、長いトンネルを脱して喜びもひとしおだろう。
ただ、今回の勝利はクレスケンスルーナ以外にもう1頭の馬のおかげかもしれない。岡田騎手の久々の勝利を裏で支えたのが、ラストヌードル(牡6歳、栗東・安田翔伍厩舎)の存在だ。
G1を3勝したフィエールマンの半弟にあたるラストヌードルは、芝で通算3勝と活躍。だが、3勝クラスでは2戦してどちらも2桁着順と冴えず。「3勝クラスの芝では緩急への対応に壁を感じます。ダートで新たな面が出れば」という安田翔師の考えにより、19日の東京10R・金蹄S(3勝クラス)に出走した。
そして、ラストヌードルの初ダート戦の鞍上に抜擢されたのが岡田騎手だった。
テン乗りながら最終追い切りなどでコンタクトを取ってきた岡田騎手とラストヌードルのコンビは、まずまずのスタートから押して先行。最初のコーナーを2番手で回ると、向こう正面では先頭に立って、レースを引っ張った。
初ダートながら軽快に走る本馬だったが、悲劇は突然訪れる。3・4コーナー中間で一気に減速し、ゴール板を通過することなくレースを終えてしまう。
競走中止となった本馬に下された診断は残酷なものだった。右第1指節種子骨の粉砕骨折と診断された結果、間もなく予後不良の処置がとられた。
「気持ち良く飛ばしていたのですが、突然止まってしまって……。嫌な予感がしていたのですが、本当にそうなってしまいました。とても残念です。
ただ、粉砕骨折で苦しい状況のなか、背中に跨っている岡田騎手を落とさず懸命に立っていたのは流石としか言いようがありません。先頭を走っていましたから、岡田騎手が落馬となると、後続各馬に踏まれるなどの危険が伴います。
そうなった場合、岡田騎手の大怪我は免れず、翌日もレースに騎乗するのは厳しかったと思います。ラストヌードルが必死に骨折の痛みに耐えたからこそ、クレスケンスルーナの初勝利、そして岡田騎手の久々の勝利が実現したのでしょう」(競馬誌ライター)
愛馬の不幸に安田翔師は自身のTwitterアカウントにて、応援してくださったファンへの謝罪と共に「岡田騎手を落とさず痛みに耐えて最後まで頑張ったヌーは格好良く管理でき幸せです。彼に貰った経験、愛情をみんなに伝えていきます」と気持ちを表明した。
クレスケンスルーナはスタートで出遅れロスがありながら、強気の先行策でメンバー最速の上がり3ハロンタイムを計測し押し切った。もしかしたら天国に旅立ったラストヌードルが岡田騎手のために、後押ししてくれたのかもしれない。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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