JRA「栗東移籍」決断の藤田菜七子に厳しい現実、「成功例」横山典弘、吉田隼人らとの決定的な違い
美浦の根本康広厩舎に所属する藤田菜七子騎手が、来週から春の新潟開催終了となる5月中旬まで栗東トレセンに滞在することが分かった。
関西滞在を決めた理由について藤田騎手は『日刊スポーツ』の取材で「春はローカル開催を回る予定なので、関西との繋がりを増やしたいと思って、チャレンジしようと決めました」回答。一時的に拠点を栗東トレセンに移すのはデビュー7年目で初めてであり、藤田騎手にとってちょっとした冒険にも映る。
「耐える 1年だった」藤田菜七子の厳し過ぎた現実!?
一見すると、思い切った行動に思えるが、最近は活躍の場を求めて栗東に拠点を移した美浦所属の騎手もおり、こういった背景も背中を押したのかもしれない。
その代表格といえるのが大ベテランの横山典弘騎手だ。同騎手は昨秋から栗東に滞在し、レースも阪神競馬場や中京競馬場での騎乗が目立っている。また、吉田隼人騎手、柴山雄一騎手も栗東に滞在することが多いことで知られている騎手だ。
ただ、栗東は川田将雅騎手をはじめ、福永祐一騎手や武豊騎手など名手が揃っている激戦区でもある。わざわざ騎乗馬の熾烈な争奪戦が繰り広げられる栗東に拠点を移すメリットはあるのだろうか。
■栗東滞在のメリット、デメリット
「まず、関東に戻ってからの関西の人脈づくりがあると思います。いくら藤田騎手が有名とはいえ、それは女性騎手としてであり、実力と知名度にはまだまだ大きな隔たりがあります。何の繋がりもない関西の調教師が、いきなり彼女を乗せることは考えにくいです。
実際、昨年1年間で関西馬に騎乗した割合は全体の約13%と少ないですから、関西の調教師と関係を築くことが、今後の騎乗依頼を増やすカギとなるでしょうね」(競馬誌ライター)
栗東滞在で関西馬の騎乗を大きく増やしたのが、吉田隼騎手だ。その証拠に、今年16勝のうち15勝が関西馬である。吉田隼騎手もローカル開催で主に活躍している騎手だけに、先輩騎手から成功の秘訣を聞けるチャンスもあるだろう。
また、関西滞在は成績向上に繋がることもある。昨秋から滞在している横山典騎手は昨年重賞未勝利の憂き目にあったが、滞在効果が出始めた今年は既に重賞を3勝。3勝全て関西馬と、実績十分なベテランにも効果てきめんだ。
これだけ聞くとメリットが大きいように感じる栗東滞在だが、その一方でデメリットも存在する。
「栗東でイチから各調教師と関係を築く必要がありますからね。最初は大変だと思いますし、騎乗馬もなかなか集まらないと思いますよ。
横山典騎手らは成功していますが、それは単純に元々関西の調教師と繋がりが強かったからです。横山典騎手は昆貢厩舎と、吉田隼騎手は須貝尚介厩舎と、柴山騎手は武幸四郎厩舎と元から結び付きがありました。
繋がりの強い厩舎での活動を軸に、徐々に今まで関係が希薄だった厩舎に営業するなどして騎乗馬を集めていったと思います。対する藤田騎手の場合は頼みの綱となる厩舎がないですから、結構厳しい気がしますよ。
ただ、彼女は続々と誕生する女性騎手の先駆けとなった存在。様々な困難に打ち勝って今がありますから、今回も頑張ってほしいですね」(同)
果たして藤田騎手はハンデを乗り越えて、人脈形成と成績向上を達成できるだろうか。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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