ジャックドールの実力に安藤勝己氏ら元JRA騎手が疑問符!? 超新星の逃げ馬に付き纏う主戦と脚質の「ジレンマ」
13日に行われた金鯱賞(G2)を圧巻のコースレコードで逃げ切ったジャックドール(牡4歳、栗東・藤岡健一厩舎)。“過剰人気”や“このメンバーでの逃げ切りは至難の業”といった戦前の懐疑論を一蹴し、一躍中距離G1戦線の主役候補に名乗りを上げた。
金鯱賞で下した顔ぶれを見ても、ジャックドールの能力の高さは疑う余地もない。
ただ、安藤勝己氏は自身のTwitterで「行く馬が揃った時のあるあるですんなり隊列が決まった。マイペースで運べるとかなり強いな」と、あくまで自分のペースで行けた時に限定している。同じく藤田伸二氏、田原成貴氏も同様の言及をしている。元JRA騎手の大御所たちも強さは認めつつ、展開が向いたとも振り返った。
実際に今回はスタートから他の馬に競られる事なく1コーナーまでにはすんなりと隊列が決まった。道中も競り掛けてくる馬はおらず、1000m通過タイムは59.3秒と開幕週にしては比較的ゆったりとしたペースだった。
このような展開の利があった事も踏まえてか、安藤氏は「次は激流になるかどうかの読みやね」と、まだ実力を疑問視しているようだ。同じく田原氏も「厳しい展開になった時にどれだけ走れるか?これから真価が問われるね」と、同馬の強さを全面的に認めていなそう。今後走るであろうG1では、後続のプレッシャーもきつくなる事が予想され、マイペースで運べなかった時にどう対応するのかが、同馬の今後の課題となりそうだ。
以上の事も含めて管理する藤岡調教師が、『netkeiba.com』で連載中の『今週のFace』で、今後の脚質転換の必要性については意識している旨を話している。
しかし一般的に、一度逃げる競馬に慣れてしまうと、控える競馬を覚える事は難しいと言われている。
例えば、昨年の大阪杯(G1)で逃げ切り勝ちを収めたレイパパレは、戦術に幅を持たせるため、好位での競馬に取り組んでいるが大阪杯の後は、勝ち星からは遠ざかっている。
さらに、主戦の藤岡佑介騎手の脚質ごとの騎乗成績の偏りも、脚質転換をしていく上では不安要素と言えるかも知れない。
昨年1月から現在まで藤岡佑騎手が勝利した際の脚質別内訳を見ると、逃げたときが3割近くと最多。昨年の重賞勝ち3勝のうち、2勝がビアンフェ、バスラットレオンと逃げ馬で勝利を挙げていたように、逃げを得意としている騎手といえる。
金鯱賞では逃げ継続を選択した陣営だが、ただでさえ難しいとされる逃げ馬の脚質転換に、主戦の得手不得手も絡んでくるジレンマも加われば、そう簡単ではないかもしれない。
昨年、コントレイルやクロノジェネシスなど強豪馬が多く引退し、古馬中距離戦線はエフフォーリア一強ムードが漂っていた。ジャックドールはそこに彗星の如く現れたスターホース候補だが、人馬共にクリアしなければならない壁はまだまだありそうだ。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。
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