JRA岩田康誠スプリングS(G2)快勝も胸中複雑!? 世代屈指の快速馬で皐月賞トライアル2連勝、「昨日の友は今日の敵」皐月賞で手綱を握るのは
20日、中山競馬場で行われた皐月賞トライアル・スプリングS(G2)は、5番人気のビーアストニッシド(牡3歳、栗東・飯田雄三厩舎)が勝利。待望の重賞初制覇を飾り、本番の皐月賞(G1)へ存在を大きくアピールした。
13頭立てながら、1番人気のアサヒの単勝は4.0倍。単勝7倍以下に5頭が並ぶ大混戦だった今年のスプリングS。
ビーアストニッシドは鞍上の岩田康誠騎手曰く「スタートで躓いた」影響でやや出負けしたが、促してハナへ。「(ハナへ)行かしたら全能力を発揮してくれます」との言葉通りに主導権を奪うと、4コーナーから早めのスパート。最後の直線入り口でセーフティリードに持ち込むと、最後はアライバルとのハナ差の接戦を制した。
「レース後に本人も『外よりも内の方がよかった』と話していた通り、芝コースの馬場コンディションを計算した岩田康騎手の騎乗が光りましたね。重賞でずっと好勝負しながらも、なかなか勝てない馬だったので、陣営にとっても大きな勝利だったと思います。
今年は賞金ボーダーが例年以上に高くなりそうなので、この勝利は本当に大きいと思いますね。今回のような混戦に強く、相手なりに走れる馬なので本番でも楽しみな1頭ですよ」(競馬記者)
2018年の天皇賞・春(G1、レインボーライン)以降、G1制覇から遠ざかり、昨年もG3・2勝に終わった岩田康騎手だが、今年はこれで重賞3勝目。全盛期の勝負強さが戻ってきた感もあるだけに、陣営にとっては頼もしい限りだ。
しかし、問題はその絶好調騎手が本番の皐月賞でも騎乗してくれるかどうかだろう。岩田康騎手と言えば、前日の皐月賞トライアル若葉S(L)をデシエルトで制したばかり。つまり、皐月賞へ有力なお手馬を2頭抱えていることになる。
ここまでスプリングS勝ちだけでなく、京都2歳S(G3)2着に共同通信杯(G3)3着、シンザン記念(G3)4着と、世代のトップレベル相手でも大崩れしない安定感が魅力のビーアストニッシド。
一方、ダートで2戦2勝という成績を引っ提げて、芝の若葉Sを3馬身差で快勝したデシエルトには無敗馬特有の底知れない魅力がある。主戦騎手がどちらを選ぶのかで、本番の人気にも影響しそうだ。
「まだ正式な発表はありませんが、おそらくデシエルトを選択するのではないかと思います。
最近、改めて重賞で存在感を発揮している岩田康騎手ですが、その主たる理由が付きっ切りの調教。2月のフェブラリーS(G1)で2着したテイエムサウスダンもそうですが、最近の岩田康騎手は『これ』と思った馬にはレースだけでなく、普段の調教から携わって調整を続けています」(競馬記者)
記者が話す通り、若葉Sの勝利騎手インタビューで「厩舎や先生、僕も含め一丸で頑張っていきたい」と語ったデシエルトには、普段から専属的に調教しているそうだ。その一方でビーアストニッシドの主戦も務めている岩田康騎手だが、こちらは柴田未崎騎手が普段の調教をつけている。
つまり、2頭には実力差以前に、主戦騎手の「熱」の入り方に差があるということだ。
「岩田康騎手も『昨日と一緒ですね』と話していましたが、デシエルトもビーアストニッシドと同じようにハナに立って押し切る内容でした。それも1000m通過60.8秒は、2日連続でまったく同じタイム。距離こそ2000mと1800mでしたが、岩田康騎手の測ったようなペース配分が光りました。
本番でどちらに乗るのかはわかりませんが、同タイプの馬だけにお互い厄介な存在になるでしょうね」(別の記者)
「攻め馬は本当にわがままでじゃじゃ馬なんだけど、レースに行けばしっかり走ってくれる。いいパフォーマンスを見せてくれた」
レース後、そうビーアストニッシドを称えた岩田康騎手。果たして、本番でコンビを組むのはスプリングS馬か、若葉S馬か。いずれにせよ「昨日の友は今日の敵」、皐月賞のペースのカギを握る主導権争いが加速する。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
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