JRA「D.レーン×インダストリア」の苦い過去と課題…NHKマイルC(G1)昨年覇者シュネルマイスターも歩んだ「黄金ローテ」が人馬共に過信禁物なワケ
先週末の30日、東京競馬場では2020年以来2年ぶりにD.レーン騎手が日本のターフに姿を現した。
初来日となった2019年からJRAで勝利を量産し、重賞やG1などのビッグレースでも数々の輝かしい記録と記憶を残した名手。久しぶりの日本での騎乗を本人も楽しみにしていたようだが、勿論それは我々競馬ファンも同様の想いだ。
来日一発目のG1参戦として、今週末の8日に東京競馬場で行われるNHKマイルC(G1)に、インダストリア(牡3、美浦・宮田敬介厩舎)とのコンビで出走を予定。現在『netkeiba.com』の予想オッズでは単勝3番人気想定と、いきなり大物を任された形だ。
インダストリアは、2019年の同レースを14番人気で2着に激走したケイデンスコールの弟にあたる血統。さらに、弥生賞ディープインパクト記念(G2)からの臨戦過程は昨年の覇者シュネルマイスターと同様で、周囲からの期待も自然と高まる。
陣営も2走前のジュニアC(L)を勝利後にこのレースを目標に定めており、本番前の弥生賞で上がり最速の5着なら合格点といえる内容だろう。
一見、大目標に向け何も不安がないようにも思えるが、実は鞍上を務めるレーン騎手にとって、NHKマイルCは「鬼門」ともいえるレースなのだ。
初めて参戦した2019年は、4番人気のグルーヴィットに騎乗。最後の直線では余力があったものの「直線では前が壁になり、フルスピードを出せませんでした」と振り返った鞍上の言葉通り、馬群の中に位置していたことから行く先々で「前が壁」となり、結局ゴールまで強く追うことは出来ずに10着に敗れている。
そして2度目の参戦となった2020年は4番人気のルフトシュトロームに騎乗するも、この時も最後の直線を向いた際は、丁度馬群の真ん中。追い出しを待たされる場面がありつつ、残り200mでようやく進路が開くも、5着まで追い上げるのが精一杯だった。
当時は、2番手のラウダシオンと逃げたレシステンシアがワンツーとなるいわゆる前残り決着。鞍上も「3コーナーあたりでスローな流れになり、ポジションが後ろになってしまったことが、マイナスとなりました」とペースとポジショニングを敗因に挙げていたが、いずれにせよ過去2戦は不完全燃焼に終わった苦い記憶がある。
「D.レーン×インダストリア」の苦い過去と課題
さらに、インダストリアに関してもデビュー当初から“ある課題”が存在する。
「以前から管理する宮田師が『左に流れてしまうところは今後の課題』と語っている通り、実際に過去のレース映像を見ても、最後の直線で強く追い出されると左側に寄れる癖が何度も見受けられました。
中山コースなどの右回りの場合、『左に寄れる=外側に膨らむ』なので、距離的なロスはあっても前の馬に詰まる可能性は低いですが、東京コースなどの左回りの場合、『左に寄れる=内側に刺さる』ことを意味しており、仮に馬群の中にいた際は詰まるリスクの高い内側から捌くことになってしまいます。
前走の弥生賞では、2度目の騎乗となった戸崎圭太騎手が上手く修正していましたが、初コンタクトとなるレーン騎手がいきなりの大舞台で制御できるかは正直疑問が残ります」(競馬誌ライター)
過去4戦全てで上がり最速をマークしている堅実な末脚の持ち主ではあるが、いずれも外目から遮るものなく伸びてのもの。今回は近3戦の捌きやすかった小頭数とは異なり18頭立てのフルゲートになる上、メンバーもセリフォスやダノンスコーピオンなどマイルG1での実績馬が相手と決して一筋縄ではいかない。
備えているエンジンは間違いなく一級品だが、激流となる事が多いマイル戦では、道中の一瞬の判断ミスが命取りとなる。過去2度の敗戦から直線でスムーズな進路取りを求められるレーン騎手だが、本番で上手く導くことができるのだろうか。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?
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