JRA武豊×矢作芳人が語るタイトルホルダー「凱旋門賞」の可能性。天才2人の理論成就にはC.スミヨンでもR.ムーアでもダメ。絶対にやってはいけない“愚行”とは

「行きたかったなあっていうのはありましたね」
年頭に放送された『うまンchu~競馬でアナタを口説きます!~』(関西テレビ)にて、そう思いを語ったのは、日本最多となる9度の凱旋門賞(仏G1、パリロンシャン競馬場)騎乗を誇る武豊騎手だ。
「土砂降りの天皇賞でも勝ったように、ああいう(欧州の重い)馬場も平気だった」
元JRA騎手の安藤勝己氏との新春恒例レジェンドジョッキー対談の席で「一緒に凱旋門賞に挑戦したかった馬」として、武豊騎手が真っ先に挙げたのがキタサンブラックだった。
キタサンブラックといえばG1・7勝を挙げた名馬。その強烈な逃げは、今でも史上最強の逃げ馬の1頭に名が挙がるほどだ。
無尽蔵のスタミナで天皇賞・春を連覇したキタサンブラック
特筆すべきはその無尽蔵ともいわれるスタミナで、JRAで最も長い距離のG1となる天皇賞・春を逃げ切ったのは、通過順位が掲載された86年以降なら2004年のイングランディーレと2016年のキタサンブラックだけである。
実際に天皇賞・春(G1)を連覇した際には、キタサンブラックにも凱旋門賞挑戦プランが持ち上がった。だが、次走の宝塚記念(G1)で不可解な敗戦を喫したことで白紙に……。凱旋門賞制覇を夢と語る武豊騎手にとっても、痛恨の出来事だったに違いない。

しかし、先週ついに史上3頭目となる天皇賞・春を逃げ切った馬が現れた。“圧逃”で2つ目のビッグタイトルを手にしたのはタイトルホルダー(牡4歳、美浦・栗田徹厩舎)だ。
レースを観た誰もが驚かされた7馬身差の圧勝劇は、イングランディーレと並ぶ天皇賞・春の最大着差(グレード制導入以降)。昨年の菊花賞(G1)も5馬身差で勝利しているだけに「現状、3000mを超える距離でタイトルホルダーに勝てる馬はいない」とまで称される、文句なしのチャンピオンステイヤーだ。
そんなタイトルホルダーだが、陣営は今秋の目標を凱旋門賞に設定。キタサンブラックに勝とも劣らないスタミナは、タフなパリロンシャンの馬場で大きな武器になるはずだ。
「先日の天皇賞・春でタイトルホルダーに敗れたことで、2年連続の2着となったディープボンドは昨年、凱旋門賞の前哨戦となるフォワ賞(G2)を快勝しています。
近年、欧州のレースで好走するためには馬場への適性が重要視されていますが、タイトルホルダーは稍重の中、スタミナ比べとなった天皇賞・春であれだけの圧勝。それでも欧州の馬場適性があるのかは、実際に走ってみないとわからない部分もあると思いますが、少なくとも簡単にバテる馬ではない点は期待できますね」(競馬記者)
そんなタイトルホルダーだが、凱旋門賞制覇の可能性を示唆している人物がいる。超名門・開成高校を卒業したことでも有名なトップトレーナーの矢作芳人調教師だ。
「フランスの競馬に合わせていては勝てない。日本馬が勝つには『逃げ切り』ですよ」
昨年の米国競馬の祭典ブリーダーズCで2勝するなど、世界的にも注目を集めている矢作調教師は先月に出演した『BSイレブン競馬中継』(日本BS放送)で、凱旋門賞に向けた“秘策”を語っている。
「フランスの競馬はペースがとにかく遅い。日本の馬がそれに合わせてしまっては勝てない」と語る師は、逃げて重賞を勝った実績のあるステイフーリッシュ、パンサラッサ、ユニコーンライオンの3頭を登録済み。本気で世界を獲りに行っているホースマンの1人だ。
奇しくもタイトルホルダーも逃げれば5戦5勝という生粋の逃げ馬。矢作調教師の理論が当てはまるなら、やはりチャンスは小さくはないのかもしれない。
「昨年のクロノジェネシスやディープボンドの陣営が、O.マーフィー騎手やM.バルザローナ騎手を起用したように、近年の凱旋門賞挑戦には経験がある現地のジョッキーが起用されていますが、タイトルホルダーに限っては個人的には反対ですね。
というのも矢作調教師が語る逃げ馬のアドバンテージは、如何に向こうのペースに合わせずに『マイペースで外連味のない逃げが打てるか』ということ。いわば奇襲です。
昨年の2人以外にもC.スミヨン騎手やR.ムーア騎手など、欧州のトップジョッキーが日本人騎手にはない技術を持っていることは確かです。ですがその分、欧州の競馬に慣れ過ぎていますし、日本競馬独特の思い切った逃げが打てるかは疑問です。
なので欧州の経験こそないですが、タイトルホルダーのことをよく知っている横山和生騎手や横山武史騎手を起用した方が、今回はチャンスが大きいのではないでしょうか」(同)
実際に、横山和騎手は天皇賞・春の勝利騎手インタビューで「タイトルホルダーと仲良く走ろうという気持ちで、馬に教えてもらいました」「タイトルホルダーを信じて、リズム良くと思っていました」と語っている。
また、管理する栗田調教師も「馬を信頼して行き脚をつけて逃げる形になったんですけど、ある程度いいリズムで運んでいるなと感じました」と、やはり横山和騎手のタイトルホルダーへの信頼を勝因に挙げている。
これがもし、凱旋門賞でテン乗りとなる外国人騎手なら、同じようにはいかないかもしれない。例え、陣営から「馬を信じて行かせて」と注文されても、初めて騎乗する馬を信じる切ることは困難を極めるだろう。向こうのペースに合わせた無難な逃げを打っても、意味がない。
「相談しつつですけど、これからも楽しみ」
パリロンシャンの地へ思いを馳せたのは、タイトルホルダーの山田弘オーナーだ。
これまでコンビを組んだ数多の名馬からキタサンブラックを推した武豊騎手、そして凱旋門賞を勝つには逃げが最も有効と語る矢作調教師。2人の理論が合致するタイトルホルダーなら、日本競馬の悲願を達成してくれるかもしれない。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。
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