JRA 海を超えて騒ぎ出す「ステイゴールド」の血、サウジで輝いた海外適性に膨らむ「オルフェーヴル産駒で凱旋門賞」の夢
現地時間2月26日、サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場で行われた「サウジカップデー」。メインのサウジカップ(G1)こそ世界の壁に阻まれたものの、その他のレースでの日本馬の活躍は大きな話題を集めた。
C.ルメール、サウジカップデー大爆発で「有馬記念3勝分」の荒稼ぎ!?
トップバッターとしてネオムターフC(G3)に挑んだオーソリティが鮮やかな逃げ切り勝ちを決めると、続く1351ターフスプリント(G3)ではソングラインがゴール前の激しい競り合いを制して優勝。さらにレッドシーターフH(G3)でも、7歳馬ステイフーリッシュが逃げ、2着に4馬身1/4差をつけて圧勝し、2018年5月の京都新聞杯以来、実に3年9か月ぶりとなる勝利を掴んだ。
世界に衝撃を与えた日本馬の3連勝、このすべてで手綱を取ったのがC.ルメール騎手である。絶好調の名手は、この後のサウジダービー(G3)でもコンシリエーレで3着に入り、つづくリヤドダートスプリント(G3)ではダンシングプリンスで逃げ切ってこの日4勝目。大舞台でその手腕を見せつけている。
日本にルメールありと知らしめたのと同時に、世界の舞台で輝きを放ったのが、「ステイゴールド」の血だろう。
■海外で躍動するステイゴールドの血
ネオムターフCを勝ったオーソリティの父はオルフェーヴルで、その父がステイゴールド。そしてレッドシーターフHを勝ったステイフーリッシュもまた父がステイゴールドだ。さらに、メインのサウジカップ(G1・ダート1800m)に挑んだマルシュロレーヌもオルフェーヴルの産駒である。
ステイゴールドといえば、国内のG1では善戦止まりでなかなか勝ち切ることができなかった中、引退レースとして挑んだ2001年の香港ヴァーズ(G1)でキャリア50戦目にしてG1を初制覇。日本生産馬として史上初の国外G1優勝という快挙を成し遂げ、JRA賞の特別賞も受賞している名馬だ。
また、同年にはドバイシーマクラシック(当時はG2)でも勝利を挙げており、キャリアの7勝に対して2着が12回、3着が8回というシルバー・ブロンズコレクターだった馬が、海外レースにおいては2戦2勝。勝率100%のまま現役を退いている。
そしてそのステイゴールドの血を引いたオルフェーヴルは、父とは異なりクラシック三冠を含むG1通算6勝を記録。父の勝率.140に対して、オルフェーヴルは.571という圧倒的な勝負強さを誇った。
その一方で、父親譲りの海外適性はしっかりと受け継いでおり、海外成績は4戦で2勝と2着が2回。2012年と2013年にフランスに遠征してフォワ賞(G2)を連覇し、凱旋門賞(G1)も2年連続で2着と、日本馬が苦しめられているタフなフランスの芝、それも重馬場で激走を見せている。
日本馬が最も凱旋門賞制覇に近づいた2012年から早10年。夢はその子どもたちに引き継がれた。
オルフェーヴルの代表産駒としては、エリザベス女王杯を連覇するなどG1通算4勝を挙げたラッキーライラックが出たが、その他で国内のG1を勝利したのは2018年の皐月賞馬エポカドーロだけ。大きな期待を受けながら、思ったほどの実績をあげられなかった馬というのも少なくなかった。
いわゆる「三振かホームランか」…。どちらかというと三振が多いという種牡馬イメージを抱く人も増えていくなかで、大仕事をやってのけたのがマルシュロレーヌである。
昨年11月にデルマー競馬場で行われたアメリカ競馬の祭典「ブリーダーズカップ」にて、ダート牝馬路線の最高峰の戦いブリーダーズカップ・ディスタフ(G1)に挑むと、ゴール前の激しい競り合いを制してG1初制覇。日本調教馬として史上初の海外ダートG1制覇という歴史的な偉業を成し遂げた。
2001年に世界への扉をこじ開けたステイゴールドからはじまり、2012年に凱旋門賞制覇という日本競馬の夢を掴みかけたオルフェーヴル。そして2021年、そのオルフェーヴルの血を引くマルシュロレーヌがアメリカで歴史に名を刻んだ。
こうした流れを経て迎えた2022年も、海外の舞台で「ステイゴールド系」の血が躍動。G3ではあったが、海外重賞初挑戦で初勝利を掴んだオーソリティは、この後3月26日にドバイで行われる「2022ドバイワールドカップデー」のドバイシーマクラシック(G1)に登録があり、状態を見て転戦する予定とのことで、勢いのままにG1初制覇にも期待が膨らんでくる。
少々オカルト的な話にもなってくるが、これだけ世界の大舞台で「ステイゴールド系」の活躍を目の当たりにしていると、血筋が持つ“海外適性”という部分にも注目したいところだ。
父の無念を晴らすべくフランスに渡ったオルフェーヴル産駒が、ロンシャンの地で激走を見せ、ステイゴールドやマルシュロレーヌのように自身のG1初制覇を海外の大舞台で挙げる…。そんな妄想が現実になる日もそう遠いことではないかもしれない。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。
PICK UP
Ranking
17:30更新- ルメール軍団「誤算続き」で迷走中?使い分けの弊害に一部ファンから疑問の声
- クロワデュノール「世代最強説」に現実味も…ダービー馬候補が未勝利戦より遅い時計の怪
- 武豊×ドウデュース完全包囲網で波乱含み!?豪華メンバーのジャパンCにチェルヴィニア、ブローザホーン、オーギュストロダンら最強メンバー集結。レジェンド元JRA騎手の見解は?
- 「別競技」の高速馬場で欧州最強マイラーの意地見せたチャリン!ジャパンC参戦オーギュストロダン、ゴリアットに朗報?
- C.ルメール「アンラッキー」な過怠金に謝罪…マイルCSでも「牝馬のC.デムーロ」の手綱冴えるか?
- エアスピネル降板に武豊騎手は「何」を思う……8年前、すべてを手にしてきた天才騎手が”最大級”の屈辱を味わった「ウオッカ事件」とは
- 【京都2歳S(G3)展望】藤田晋オーナーの大物エリキングが登場! ジョバンニ、サラコスティがリベンジに燃える
- 【ジャパンC(G1)展望】「ディープ」オーギュストロダンVS「ハーツ」ドウデュース、2005年有馬記念から19年越しの最終決戦!
- 春のG1戦線に水を差す「醜聞」続く…現役騎手の父に詐欺容疑、G1馬オーナーが逮捕
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
関連記事
JRAオルフェーヴルも歩んだクラシックの登竜門。池添謙一×池江泰寿厩舎の「3冠コンビ」が、きさらぎ賞(G3)で9年ぶりの重賞Vへ!
JRA「超異例」デビュー半年前に“去勢”した珍名馬が「144戦0勝」舞台でメイクデビュー、3冠馬オルフェーヴル撃破“名セン馬”の再来はあるか!?
JRA「騎乗停止」武豊×オルフェーヴルで池添謙一の人生変わった!? 泥沼「8連敗」C.ルメールは何故「クロノジェネシス×凱旋門賞(G1)」を断念したのか【週末GJ人気記事総まとめ】
オルフェーヴル凱旋門賞「クビ差2着」を支えた伝説のパートナー! クロノジェネシス・ディープボンド好走の鍵を握る「縁の下の力持ち」は?
JRA武豊まさかの「騎乗停止」…池添謙一の騎手人生を分けた13年前の夏。自身の「営業力」で掴んだグランプリ連覇、そしてオルフェーヴルとの三冠制覇へ