JRA「記憶にない大差」「映像等お届けできないのが残念」突如現れた「超新星ジャンパー」が驚愕の5.1秒差圧勝劇。早くもオジュウチョウサンとの対決望む声も、越えるべき「課題」とは
最終障害を飛越し、残すはゴールという地点で、後続は残り400mの標識に差し掛かったところ――。まだ最後の直線にすら入っていなかった。
7日、新潟競馬場で行われた4R・障害未勝利は1番人気のフォッサマグナ(せん6歳、美浦・黒岩陽一厩舎)が勝利。2着馬を5.1秒も突き放す圧巻の走りで、障害レース初勝利を飾った。
この日が、2022年開催の開幕となった新潟競馬場。1Rの障害オープンでは、障害2890mのレコードがおよそ20年ぶりに更新されるなどド派手な幕開けとなったが、同じコースで行われた4Rでは再び衝撃的な結末が待っていた。
10頭立てのレースで、好スタートを決めたフォッサマグナは迷わずハナへ。内から4番人気のカレンロマチェンコが抵抗したが、直後の第1障害を飛越したところで一気に飛び出した。後続との差をどんどん広げると、3つ目のコーナーに差し掛かったところで、早くも10馬身以上突き放す大逃げの形になった。
だが、ここでペースを緩めないのが、このハードル界の「新星」の驚異的なところだ。
netkeiba.com「映像等お届けできないのを残念に感じる」
そのまま後続との差はさらに開き続け、レースの模様を伝えるためのカメラが引けども引けども後続の様子を映すことができない。20馬身以上の大差をつけた一人旅は、最後の直線を待たずして「勝負あり」と言えるほどの絶望的な差となった。
あまりの大差に、新潟競馬場のスタンドからは異例の拍手が起こった。最後の障害を飛越したフォッサマグナは、残りのレースをまるでウイニングランのように悠々と流してゴールした。
「驚きました。大きな差が付きやすい障害レースですが、これだけの大差は記憶にありません。平地を走っていた時は、主に短距離を使われて、マイル戦でハナを切るくらいのスピードを持った馬。開幕日の絶好の馬場コンディションが味方した面もありますが、それにしても強いレースでした。飛越が非常にスムーズで、障害馬としての素質を感じさせます。今後が楽しみな存在ですね」(競馬記者)
衝撃的な大差圧勝に、レース後には「フォッサマグナ」がトレンド入りした。大手ポータルサイト『netkeiba.com』の公式Twitterが「映像等お届けできないのを残念に感じる驚愕の圧勝劇」と呟けば、競馬ファンからも「すごい大逃げ」「とんでもないな」といった驚きの声が続々……。
中には「オジュウチョウサンとの対決が楽しみ」と、早くも現役最強障害馬との対決を心待ちにする声もあった。
その一方で、フォッサマグナはまだ障害レースを1つ勝っただけ。ある記者は、オジュウチョウサンと戦うには「まだ課題がある」と語る。
「すごいレースでしたし、勝ち時計の3:06.7も1Rで更新されたレコードと1.2秒しか違わない非常に優秀なタイムです。1.2秒差というと平地の競馬では大きな差に感じられると思いますが、例えば昨春の同時期に、新潟の同条件で行われた障害未勝利の勝ち時計は3:12.3でした。
ただ、あえて冷静な意見を言わせてもらうなら、これだけの大差がついたのは、後続のジョッキーたちが『どうせ止まる』と思っていた部分もあると思います。というのもフォッサマグナは、この日が障害転向2戦目。前走の小倉でほぼ同じ距離(2860m)を走りましたが、大逃げを打ったものの最後に失速して4着に敗れていたからです。
今日は高速馬場が味方しましたが、今後オープンに上がった上で、条件が変わってどうなるのかはまだ未知数だと思いますね」(別の記者)
実際に、レースを終えた鞍上の伴啓太騎手も「とにかくいいスピードがある」と絶賛した一方で「前向き過ぎてがむしゃら。今日は能力だけで走った感じです」と課題を挙げている。
今回は2890mだったが、障害重賞は3000mを、障害G1に至っては4000mを超える戦い。溢れんばかりのスピードが持ち味のフォッサマグナだけに、今後の距離延長は小さくない課題だ。
「まだ覚えることがありますが、その辺りが良くなってくると楽しみです」
レース後、そう伴騎手に期待を寄せられたフォッサマグナは、この日が2度目の障害レースと、まだまだ伸びしろがある存在だ。順調にいけば年末の中山大障害(G1)でオジュウチョウサンとの対決になるだろうが、果たしてどれだけ成長した姿をファンに見せられるか。ハードル界に突如現れた超新星の躍進が、大きな注目を集めそうだ。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
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