JRA「サクラ軍団」のエースがぶっちぎり最下位……今年「0勝」で最盛期・年間10億円が650万円に。サクラバクシンオー、サクラローレルらを誇ったエリートがついに崖っぷちか
8日に行われたメトロポリタンS(L)は、ゴール前で3頭が競り合う大接戦だった。結果はD.レーン騎手のヴァイスメテオールが勝利。レーン騎手のド派手な風車ムチが激しい叩き合いを制す迫力のあるレースだった。
その一方で、集団から遅れること9馬身。ぶっちぎりの最下位に終わってしまったのがサクラアリュール(牡7歳、栗東・村山明厩舎)だ。
ただ、この結果はある程度予期できた。何故ならサクラアリュールは2走前の日経賞(G2)でも、前の馬に10馬身引き離された最下位に終わっているからだ。残酷なようだが、芝では完全に頭打ちの印象だ。
若い頃はダート路線を歩み、一昨年のシリウスS(G3)で2着。それもハンデ戦とはいえ、“あの”カフェファラオ相手に3/4馬身差に食い下がったのだから、それなりに将来を嘱望されている馬だった。
しかし、その後はダートのオープンクラスの厚い壁に跳ね返される日々が続いた。昨年もオープンとリステッドで3着するのがやっという成績。まったく通用しないわけではないが、その分これ以上の伸びしろも感じられなかった。
そこで陣営が舵を切ったのが芝路線だったが、結果は先述した通り目も当てられないもの……。
そして、これが現在の「サクラ軍団」のエースの状況である。
1990年代に栄華を誇ったサクラ軍団
中央競馬にグレード制が導入される以前の1970年頃から90年代まで、サクラ軍団は間違いなく競馬界の中心にいるエリート集団の一角だった。代表的な馬は、大人気競馬アプリ『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)にも登場しているサクラバクシンオーや、サクラチヨノオーだろうか。
他にもサクライワイ、サクラショウリ、サクラシンゲキ、サクラユタカオー、サクラスターオー……活躍馬を上げれば枚挙に暇がない。当時の競馬の名門といえば、祖父メジロアサマ、父メジロティターン、メジロマックイーンと父子3代天皇賞制覇を成し遂げた「メジロ軍団」だが、その超エリートをして「スピードのサクラ、スタミナのメジロ」と評されるほどの栄華を誇っていたのがサクラ軍団だ。
特に1990年代にはサクラバクシンオー、サクラチトセオー、そしてサクラローレルと立て続けに歴史的名馬が出現。ローレルが年度代表馬に選出された1996年に至っては、馬主リーディングで2位まで上り詰めている。社台ファームら一口馬主クラブが謳歌する中、所有頭数に限りのある個人馬主としては異例の快進撃と言っていいだろう。
しかし、2000年代に入ると、その勢いは陰りを見せ始める。
サクラ軍団の「最高傑作」として2003年クラシックの覇権を争ったサクラプレジデントが、社台ファームのネオユニヴァースに返り討ちに遭うと、これまでほぼ交流のなかった武豊騎手を招聘したが、それでもG1勝利には手が届かなかった。
そこからサクラ軍団は徐々に衰退の一途をたどるようになったのだ。
わかりやすいのが年間の収得賞金だろう。最盛期を誇った1996年は約9億6000万円と10億円に迫る勢いだったが、そこを頂点にほぼ右肩下がり。2016年に2億円を割り込むと、昨年は約6000万円と、ついに1億円を割ってしまった。
それもそのはず。サクラ軍団のG1勝利は、1996年の競馬の総決算となったサクラローレルの有馬記念(G1)が最後なのだ。重賞勝利までハードルを下げても、2017年の札幌記念(G2、サクラアンプルール)が最後と、もう5年近く勝てていない。
特に悲惨なのが今年で、すでに5月に入ったが「サクラ軍団」つまりさくらコマースは1勝を挙げることさえできておらず、2着も未勝利戦で1度あるだけ。収得賞金は650万円と、1000万円にさえ到達していない。まさに風前の灯火と言っても過言ではない状況だ。
長く競馬を見続けているオールドファン、そして『ウマ娘』のユーザーたちの反応を見ても、未だサクラ軍団の人気は健在だ。今年の桜も間もなく見納めとなるが、なんとかもう一花咲かせてはくれないだろうか。盛者必衰とはいえ、このまま消えるのはあまりに寂しい。
(文=浅井宗次郎)
<著者プロフィール>
1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)
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